June 20, 2017

身近にある「嫌な音」を使った学習の例

嫌なことを回避すること
人間にも犬にもその能力は備わっています。

だから
「問題行動を減らすために叩いて叱ったらよいのでは?」
「叩くのは嫌だけど、大きい音で脅かしてやめさせるのはどうだろう」
と考える人もいるのだと思います。

もともと犬のことが好きで
家族に迎え入れて
最初から「犬は叩いてしつけるものだ」だなんて考えることは少ないと思います。

でも何か困った問題が起きた時、
叱らないから問題が起きているのではないか
と考えてしまう…。

今回は、「嫌なこと」に対する動物の行動について
身近な例で少し分析してみたいと思います。

「嫌な事」をなくすために
「嫌な事」を避けるために
行動することは、行動学的にも正しい1つの学習の形です。

頭痛がしたから頭痛薬を飲んだ。(頭痛という嫌なことをなくすため)
そうしたら頭痛が収まった。

雨だから傘をさした。(雨に濡れるという嫌なことを避けるため)
そうしたら雨に濡れずに済んだ。

日常生活の一コマ
特に「嫌な事」だなんて大げさに意識する人はいませんね。

また「嫌な事」を利用した
面白い仕組みもあります。

例をあげましょう。
「シートベルトを着けないと鳴る警告音」です。

シートベルトを装着せず
アクセルを踏み20キロ以上のスピードが出ると
必ず警告音が鳴ります。

一度鳴った警告音は
20キロ以下にスピードを落としても鳴りやみません。
一時停止しても鳴りやみません。

この警告音を止めるには
必ずシートベルトを着用しなければなりません。

この仕組みには
いい点が2つあります。
・警告音は、毎回同じ状況では必ず鳴ります。
例外はなし。大きすぎる、小さすぎるということはなく、毎回同じ音です。

・運転する人は、警告音の解除の方法と回避の方法を知っています。
シートベルトをはじめから着用していれば、警告音は鳴りません。


この仕組みは、ある特定の行動を学習する
2つの条件を満たしているため、とても効果的です。

1.対象は嫌なことを回避する方法を知っていること
2.異なる行動を選択しても、嫌な行動を回避できないこと

別の言い方をするなら
「シートベルトを着用する」という明確な行動を知っている人
に対して有効な方法です。

・運転方法を知らない(例えばどれがアクセルでどれがブレーキか知らない)
・車のシートベルトの着用方法を知らない
人に対しては、学習効果は望めません。


さて、犬のトレーニングに話を戻してみます。
犬が正しい行動(人間が望む行動)を学んでいない場合は「嫌なこと」を使ったトレーニングは意味がありません。

また、嫌なことを回避する方法が、「正しい行動」の他にもあるのであれば
犬は「正しい行動」をとるのではなく、その行動をとるかもしれません。

だから
早合点で「叱らないから問題行動」とは考えないで下さい。

また、ちょっと観点は異なりますが
怒ることと
叱ることは
違うよー!
って聞いたことありませんか?

私は、あります。
聴導犬のトレーニングのアシスタントをしていた時に
担当のトレーナーに言われた言葉でした。

私はその場で
「なるほどー」
と納得し
翌日
「あれっ?何が違うんだろう?」
と再び悩んでいました。

あの時
何が違うのかなーと悩んでみたことを
今思い出しています。