May 6, 2021

意図した行動と、無意識の行動と、犬のトレーニング

 車移動のこと。

「あっ…時間がなんとなく余裕がないな」と思う時ほど、赤信号にぶつかります。
いつもは、テンポよく走っている道路なのに
「あれっ?この道、3つも信号があったのね…」と落ち込みます。

今日も、そんな日。
ですが、今日、少し違ったのが、前の車のステッカーでした。

よく見るステッカーは
「ジャーマンシェパード!」
「シェルティ乗ってます!」
好きな犬種やお家の犬のシルエットのステッカーだったり

「赤ちゃんが乗ってます」
「法定速度で走ってます。お先にどうぞ」
などのお知らせ系です。

今日赤信号待ちで、気づいた車のステッカーにはちょっと不思議なメッセージ。
一種のお知らせと言えなくもないですが
「本当はもっと寝ていたい」とありました。

二度見して
「同感です」とつぶやいた私は思わず、くすりと笑います。
ギューッと力を入れてハンドルを握っていた手から力が抜けるのがわかりました。

------------

話は変わって、犬のトレーニングの話。
トレーニングには特定の「合図(Cue)」と「行動」を結び付ける練習があります。

「合図」と聞くと、「オスワリ」などの「言葉」をイメージされる方が多いと思います。状況によってはそのイメージは正しい。オスワリと言われて犬が座って、トリーツをもらう。うれしそうに尻尾がぱたぱた揺れる。多くのワンコが、特定の場所ではできる行動です。

一方で、「オスワリ」の言葉がまったく犬の耳に届かないような場面も、多くの飼い主さんは目にされています。例えば、お散歩中は難しい。苦手な犬がいる場所では、まったく無理。なぜそんな状況かと言えば、飼い主さんの「声(オスワリという声かけ)」以外にも行動を引き出す「合図」がやまほどあるから。

犬が目の前を通った。(目からの情報)
ジョギングの人が通り過ぎた。(目からの情報)
救急車のサイレン。(耳からの情報)
ごみ収集車が接近中。(目と耳からの情報)
気になる犬の匂い。(鼻からの情報)
走る動物を追いかけようとすると張って苦しいリードの存在(痛みや不快感)

極端な言い方をするなら、オスワリする行動を阻害して、他の行動を引き出す「合図」がやまほどあるわけです。

私たちが犬をトレーニングするときにうまくいくコツの1つは
「言葉の合図(意図した合図)」と
「言葉以外の合図」があることに目を向けることです。

なぜなら
「言葉以外の合図」の方が特定の行動と結びつきやすいことが多くあるからです。

上記の「合図」はトレーニングの邪魔になりそうに見えます。
ですが、実は生活を助けてくれる「合図」もたくさんあります。

いろんな刺激は、最初は「無意味の刺激」ですが

嫌な経験を通して「やめてほしい行動(問題行動)」を引き出してしまったり
楽しい経験を通して「いい行動を引き出す/行動を持続させる」のに役立ちます。

例えば
「ドッグドアがある(目からの情報)」→ドアをくぐる→「庭で散策できて楽しい♪」
「ドッグベッド(足からの情報)」→ベッドに乗ったら寝そべる→「居心地がいい」
「齧るオモチャ(目からの情報)」→オモチャを齧る→「きもちが落ち着く」

最初は「意味がない」合図が犬にとっての「嬉しい合図」につながったとき
宇宙人とのコミュニケーションに成功した気分!というと、大げさでしょうか。でも、言葉以外の会話に目を向けるのは、犬と一緒に暮らす時に必要な視点です。

「言葉以外の合図」の活用は、トイレトレーニングの場でも一役買っています。トイレトレーニングがうまくできている時、愛犬の周りで「何があるのか(もしくはないのか)」見守ってみるときっと成功率がアップするはずです。

---------------------

さて信号を見てはさっきまでイライラしていたトレーナーの馬場は
「信号待ちも悪くないなぁ」と、気分を切り替えることに成功した模様です。