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2017年6月13日

トレーニングにフードを使う「準備」のこと

「おやつが欲しいぞ」
とママの方(またはおやつ、その物)をみつめる目と

「次は何をする?」
とママをみつめる目は

やっぱり何か違うと思います。
何が違うのかな…と考えてみました。

犬の表情でしょうか?
目の見開き具合かもしれません。
呼吸の仕方が違う?

何が明らかに違うか言い切れないままも
「おやつを使ったトレーニングはちょっと…」
と口にする飼い主さんの気持ちが少しだけわかると感じる機会が
先日ありました。

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2歳半の元気いっぱいの柴犬の男の子のおうちにお伺いしました。
「どんな時に困っているんですか?」とお尋ねしたところ

飼い主さんは、ちょっとためらい気味に
ワンコが好きなフードをカバンから出しました。
フードをみたワンコは飼い主さんに飛びつきますが
飼い主さんが「オスワリ!」というと座ります。

フードを棚に置くと
欲しくて棚に飛びついて、もらえるまで吠えます。
飼い主さんが「オスワリ!」というと座りますが
吠える→オスワリ→フード
これじゃぁ…困ると飼い主さんは頭を悩ませていました。

冷蔵庫内のフードも同じです。
冷蔵庫から出す時に、毎回吠えてしまいます。
(飼い主さんに了承を頂いた上で、掲載しています)

確かにこれでは
「オスワリ」というコマンドで座っていることには違いないですが
続けたいトレーニングではないことは明らかです。
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さて、ここで食べ物を使ったトレーニングって何か
ちょっと整理してみましょう。

行動学的に基づいて捉えると
正しい行動を取れた直後に
ご褒美があると
自主的にその行動をとるようになります。

また、ご褒美に使うのは
小さ目なおやつやドライフードがお奨めです。
食べ物が好きな犬は多いし
食べ物は繰り返し使うことで
わかりやすいトレーニングの手助けになります。

食べ物を使ったトレーニングは
なんだか
おいしい!たのしい!

基本的に
上記の意見に絶対反対!!
という飼い主さんは最近あまり見かけません。

また特別トレーニングと力まなくても

お散歩バックにおやつを入れてお散歩♪
公園でお友達にあったら、おやつ交換が日課♪

近所やレッスンの訪問先で、そう耳にすることが増えたのは間違いない気がします。

以前は
「おやつを使わないでトレーニングするべきだ」
「おやつを使うと犬になめられるぞ」
という考え方の人も多かったので

怖がりワンコさんや
散歩中の過剰な吠えに対するリハビリトレーニングであっても
食べ物を使う際は、まず「食べ物を使うメリット」について、飼い主さんに説明し、了承を得ることが必要でした。

ですが、今は「食べ物を使うことによるデメリット」も合わせて
飼い主さんにお伝えする場面もあるように感じます。

では「デメリット」は何でしょうか。
特別なことではありませんが、食べ物は興奮と関連付けやすい性質があります。
食べ物は、多くの場合ワンコにとってうれしいものではあるのですが
食べ物に対して「興奮する」場合
「褒めている」つもりが「興奮したまま褒めている」になってしまい
落ち着いた行動を伸ばすためには効果的ではありません。

実は
オスワリ1つをとっても
落ち着いてオスワリと
興奮したままオスワリが
あるんです。

トレーニングにフードを使う準備とは
「食べ物があるところで興奮しない経験」のことです。
これができると
・おやつの袋を出した直後
・飼い主さんの食事の場
・他のワンコさんが食べ物をもらう場
などにも応用がしやすく
家庭犬にとって大切なスキルにつなげていくことができます。

「食べ物があるところで興奮しないこと」を
普段の生活で自然に身に着けていくコといる一方で
あえて人間側が意識して「興奮しない経験の場をつくる」ことが必要なコがいる
ことはあります。生まれつきの食べ物に対する意欲の差もあるでしょう。

ですが、もしかすると犬に関する情報が増えたことにより
【自身の愛犬がどういう状態か】を読み取ることよりも
【何をするか(オスワリを教えましょう・マテを教えましょうなど)】の方に私たちが気を取られすぎているからなのかもしれない…。
そんなことを改めて考える機会になりました。

最初にお話しした柴犬さんとは
フードのオフの練習に取り組むことからレッスンを始めました。
こちらの練習も「すること」よりもその練習の時の「ワンコの状態」の方が大切です。