February 19, 2024

美味しいものを食べてぐっすり寝ること

 「ピーマンのスープっておいしい…」

先日ピーマンは、丸ごと食べることができる野菜だと知り、ピーマンを種ごと刻んで煮込んだスープを作りました。一緒に入れた野菜は新玉ねぎと特売で安かった人参。少しのクミンと塩コショウ、それからカレー粉を放り込みます。

以前はヘタと一緒に種を取り除いて「空っぽの野菜」として使っていたピーマン。ある時、丸ごと焼いて、お浸しにすると美味しいと教えてもらいました。ほんの少し油をひいたフライパンでゆっくり焼いたピーマン。表面がちょっぴり焦げて、くたっとなったら醤油を少し。甘みがあって、中の種も何の違和感もなく食べられます。今まで捨てていた種、もったいないことをしたなぁと思ってしまう美味しさです。

焼いたピーマンとは違い、煮込んだピーマンだと種から少し辛みが出るのか、カレー風味のスープによいアクセントになります。休みの日はカレーの香りが漂うと、私はなんとなく落ち着きます。

「いい匂い…」と思わず鼻をひくひくさせたら、テーブル横の長座布団を枕にして寝ていた相棒犬が寝返りをうちました。

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犬のトレーニングの一番の秘訣は何かと聞かれたら

おいしいものを食べて
たくさん歩いて
ぐっすり寝ること

と私は答えると思う。

もちろん、それだけだったら、トレーナーの仕事は必要なくなっちゃうだろうけれど
ぐっすり寝るコはその場で安心できているわけだし
ごはんをしっかり食べることも、極度に不安な場所ではできない行動です。

犬と暮らす時、何はなくても、その2つの点だけでも、意識することは大切だと思います。

こんなことを考えたのには、少しきっかけがあります。先日お伺いしたトイプードルの飼い主さんは、愛犬の食が細いことに頭を悩ませていました。

「食が細い」ワンコの特徴には
実は「食べ物がものすごく好き」という一見矛盾する状況が時々見られます。

食べ物が好きなので、飼い主さんは、食べ物を使って熱心にトレーニングに取り組むことが多い。特にトイプードルは「子犬のうちにお手入れ練習を完璧に!」と焦る飼い主さんもおられるのではと思います。

ただ、食べ物が好きなワンコは、時としてがんばり過ぎてしまうことがあります。
言い換えると、食べ物はほしいけど、練習は楽しくない…。そんな状況に陥っている子犬と飼い主さんのペアは、決して少なくないと思うのです。

今現在、お手入れ練習をがんばりっている子犬の飼い主さんには「やらなければいけないことリスト」をくしゃっと丸めてゴミ箱に入れ、まず子犬の様子を見る時間をとって下さい。

例えば、お家のワンコにこんな様子はありませんか?

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・ごほうびのおやつを食べるときにガツガツ歯が手に当たる

・食べ終わった後に、そっぽを向いてその場を離れる

・ごほうびのおやつをもらう時に、普段よりも目がぱっちり(目を大きく開いてる)

・練習を始める準備をすると、鼻鳴きが目立つようになった

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一見すると、練習に意欲的に見えることもあるこれらの「反応」は、もしかすると子犬のSOSサインかもしれません。本来ごはんやおやつは、楽しく食べることが先で、練習はその次に出てくるもの。

忙しい私たちは、お仕事が休みの日にすべての課題を片付けなければいけない。時間は待ってくれないからと。
でも、子犬との生活は、実は15年や20年も続くものなんです。10日以内にお手入れ練習を完璧にだなんて考えは、今すぐに捨てて大丈夫です。私たちが、子犬に伝えたいのは「あなたの家は安全な場所だよ」ということ。

お手入れが今できなくても、美味しいごはんが食べられて、のんびり寝ていたら飼い主さんが横でほっこりする。そんな場所をまず作りましょう。そこには、まず「見守る時間」が必要。そして個人的な意見ですが「見守る時間」には、煮込み料理と相性がよいですよ。

January 1, 2024

新しい年と新しい抱負

新年あけましておめでとうございます!

毎年年末年始は、ドタバタドタバタ…が定番だったトレーナー馬場と相棒犬ですが
今年の新年は、お正月飾りを用意しました。

益子町で訪れた雑貨屋の店主さんが「花餅」というお正月飾りを作っていて、作っている店主さんがあまりにも楽しそうで、思わず「作ってみよう!」と取り掛かりました。調べてみると、江戸時代からある風習で、五穀豊穣や商売繁盛を願う飾りでもあるそうです。

花餅のことを書きながら、ふと今年の抱負を決めました。
「やってみよう!」は難しいことでなく、傍にある簡単にできることだから。
犬のトレーニングも、難しいことを頑張るのではなく、簡単にできることに目を向けることから始めましょう。

情報社会の今、子犬を迎え入れた飼い主さんは熱心に勉強されている方が多く
「社会化を頑張ろう」
「お手入れ練習に取り組もう」
「犬友を作らなくては」
「災害対策もしていかなければ」

とあれもこれも頑張りすぎていることがあります。

今やらなくても大丈夫なことと、今やらなければいけないことの線引きは、難しい。ただ、1つだけはっきり言えるのは、周りのコや、以前一緒に暮らしていたコと比べる必要は、決してないということ。

コタツに潜って、頂いたクリスマスカードと年賀状を抱えて読む。3年経って、10年経っていつのまにかできるようになっていることってあるんだなぁと感じました。パピーの時だけお会いした飼い主さんからの連絡を受け取った時、小さな積み重ねの大事さを改めて感じました。

私の今年の目標は
飼い主さんが「頑張らなくてもできること」に目を向けるお手伝いをしていくことです!

うちの相棒犬も、まだまだ伸びしろだらけです!


November 2, 2023

トレーニングに柔軟性を持つ飼い主さんが増えたと感じる

 「柔軟性」の言葉のイメージってどんなものですか?

前屈(股関節)
開脚(股関節)
正座(膝関節)

など体の柔軟性がまず浮かびますよね。

柔軟性がなく、腰痛肩こり膝痛にも最近悩んでいるトレーナー馬場としては、緊急に取り組まなければならない課題の1つです。でも、今回の話題は「考え方の柔軟性」についてです。

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「トレーナーの仕事を続けてきてよかった…」とふと口にしていることが増えました。

最近の話を挙げるなら
抱っこが苦手なパピヨンさんの飼い主さんが
「そっか自分から膝に乗る時は、横で寝そべることができるよね」と口にされた時


リードがあると動きがぎこちなかったジャックラッセルテリアのワンコが
翌月の訪問レッスンでは、リードつけたままオモチャを追いかけ、リズミカルにパパの足元に走りこんだ時

どちらも「宿題」として私が提案したものではなく
飼い主さん自身が解決方法を見つけだしたことです。

以前は「犬のしつけはこうあらねばならない」という主流の考え方があったせいか
何か苦手なことに取り組む際に
「犬が楽しい課題」に落とし込むという考え方が一般的ではありませんでした。そのためトレーナーが提案してから、飼い主さんが動くということが多かったように思います。

最近の飼い主さんは、自主的に動かれる方が本当に多い。
自主的に動いて失敗する場があっても、リカバリー(回復)できる柔軟性があるからです。

考え方の柔軟性をつけるには、いろんな方法があるのですが、1つご提案したいことがあります。それは「お家の犬が苦手なことを言葉にしてみる」です。

苦手を口にするのは「めちゃくちゃ難しい行動」です。
苦手なことを口にすると
例えそれがどんなに親しい相手であっても

「えっ?このコはそんなことが苦手なの?」と思われたらどうしよう…
「可哀そう」と思われるのは、嫌だなぁ…

などいろんな不安が湧き出てきます。
私自身、今でもヒトに話すとさらに嫌な気持ちになるから話づらい「苦手」とがあります。

そもそも初対面のヒトと話す時、私は今でもかなり緊張しますし、相棒犬の苦手を説明しても、わかってもらえなくてやきもきすることがあります。でも、何度か会う人は、協力してくれることが多いです。

また、周りの協力が得られる得られないを別にして
苦手なことを口にだすことで
「これは苦手だな。でも、この形ならできるかもしれない」
と発想の転換が図れることもあります。

さて、苦手を口に出した後はどうするか?

私は、最初のレッスン訪問の時には、犬が嫌な刺激(興奮が強い刺激)が起こる状況を、現状取り除けるなら、まず一旦それを取り除いて下さいとお伝えすることが多いです。ただ、それだけじゃ、もちろん問題は解決しない。

次のステップが必要です。それが「犬がわかりやすい行動パターン」を作っていくこと。
マットに乗る。オスワリしてその場で止まるなどはその一例です。

最後のステップが「犬が嫌じゃない行動パターン」を作っていくこと。
この部分が、実は一番難しくて、ご家庭で取り組む時につまずき易いのかもしれません。


昨今「ほめる(楽しい)トレーニング」という言葉が多く見聞きされる中
「犬が嫌じゃない」状況に注目するのは、違和感を感じるかもしれません。ですが、このステップは大切です。

犬が「嬉しい行動を繰り返す」は分かりやすいのですが
犬は「嫌な状況がなくなる行動も繰り返す」ことにも目を向けてほしいんです。

ご家族でも、トレーナーでも、遠慮なく話せる相手を作って、ひとりで抱え込まないこともトレーニングの「こうしなきゃいけない」から抜け出す近道です。ぜひ周りの人を巻き込んだイヌ育てをしていって下さいね。

July 18, 2023

夏のお知らせ

 

「わたくし78月は、おやすみします!」





馬場:「あら?勝手に何やってるの?」

相棒犬:「ねるよってお知らせなの」


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失礼いたしました。相棒犬は、暑い時期は休業中ですが、トレーナー馬場は78月通常通り営業しております。

 

さて、今年の夏は去年にも増して暑い日が続いています。

38℃って、お風呂と温度変わらないじゃないか…と思いながら、夜疲れて帰宅すると、ぬるめの湯舟に浸かるとほーっと落ち着きます。

 

暑い時期、みなさんどうやって乗り気っていますか?

 打ち水で涼しくなる?

美味しいかき氷を食べる?

BBQでスタミナ回復?

避暑地へ逃げる?

私は「夏のない国に行きたい…」と日に15回は口にしています。

 

犬にとっても辛い時期。お散歩も短くせざるを得ません。さてそこでご提案です。

この猛暑の機会に、「ノーズワーク」に挑戦してみませんか?

犬が得意な「匂いを嗅ぐ」「物を見つけ出す」行動を存分に生かす活動です。

前期後期と分けて提供しています。

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前期の内容:

ノーズワークの準備と片付けと注意点

ノーズワーク作業の目的の確認

レベルアップの手順①(箱の置き方)

レベルアップの手順②(箱の種類を変える)

ノーズワーク中の犬のボディランゲージ

ノーズワーク作業の開始の合図と、終了の合図

番外編:屋外での作業の準備

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 後期の内容:

食べ物ではない「特定の匂い」への意識づけ

「匂い」の準備と片付けと注意点

レベルアップの手順

「匂い」を見つけた時の犬のボディランゲージ

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興味を持った方、お問合せ下さいね。

June 3, 2023

専門用語に馴れてみよう3(負の強化)

先月、私と相棒犬は久しぶりに山登りに行きました。

切り株の傍で休憩していると、ふたり連れの登山者が相棒犬に気づき、こちらに笑顔を向けました。

 

「わんちゃんに挨拶してもいいですか?」

「うちの犬は怖がりなので、私の横にしゃがんでもらえると助かります!」

 

以前の私は伝えたい言葉がとっさに出てこなくて、手を伸ばす人に相棒犬が後ずさり、それから吠え、私が赤面するという定番サイクルをたどっていました。その時のことを思い出しながら、私は相手の人と目を合わせました。

 

相棒犬は、声をかけてくれた人の手の匂いを嗅ぎ、その手に、ほんの少し肩のあたりから体重を預けました。

 

木のベンチに腰を下ろして、お奨めの山や、テントのことや、調理器具の話をするうちに、相棒犬は私横にいた、もうひとりの登山者の足元で寝転びました。

 

寝転ぶ相棒犬に、なんだか嬉しそうな様子の今日初めて会った人。ほんの短い時間の共有ですが、彼らの八ヶ岳のキャンプ泊の話には、私は自分が身を乗り出して話を聞いているのに気づきました。目を向けると相棒犬は目を細めたままでした。

 

私と相棒犬が去り際に、その登山者のひとりが私に言ったのは、意外な言葉でした。

「実は、私は犬にあまりなつかれることがないんです。このコが横で寝そべってくれてちょっとびっくりしました」と。

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犬は嫌な刺激がある時、その刺激を遠ざけるために「吠える」や「歯を当てる」などの行動を試すことがあります。この行動が「吠える」だった場合、「吠える」ことで嫌な刺激を遠ざけることができたなら、「吠える」行動は強化されるので、同じ行動(吠える・咬む)などの行動を選択します。(負の強化と呼ばれます)

 

今回目を向けたいのは、犬が「嫌だ」と言ったならば

「何が嫌だったんだろう」という部分です。

その「嫌なこと」がない場合、犬はおそらくは別の行動を選択する。

 

同じことは、犬と仲良くなるのが苦手な人にも言えるかもしれません。

「犬の傍に寄ったら吠えられた」などの状況が続いたなら、次に犬に会った時に、どういう接し方が正しいかわからなくて戸惑うでしょう。犬の次の動きが怖くて緊張するなら、無意識に犬を「じっと見る」かもしれません。犬をじっと見たことで「犬がいて緊張した」状況がなくなる経験(犬が吠えて、飼い主が犬を連れて離れていく)が無意識のうちに負の強化(嫌な状況が、犬をみたらなくなった)になっていたのかもしれません。

犬と仲良くなりたいと思っていれば「犬が離れてほっとした」という表現には、首を傾げるかたもいると思います。ただ、犬の次の動きが気になって「目を離せない(じっと見てしまう)」という緊張感はあるのではないでしょうか。

 

負の強化は、無意識の行動にも作用します。

「無自覚の行動(見る)」に対して、「無意識の嫌な気持ち(緊張した)がなくなる」状況が伴う。

 

【負の強化】とは生き物は「嫌な刺激」や「緊張を伴う刺激」を減らすことができた行動は、再度選択するいうこと。

 

犬にとっての【負の強化】を逆手に取りたいのならば
犬が「嫌だー!!大変だー!!」と大騒ぎをしなくても「今そこにある嫌な刺激」がなくなる経験が必要です。

言い換えると「嫌な刺激を取り除こう」ですが
取り除くタイミングが
「嫌だー!」と叫んでからなのか
「嫌だー!」のちょっと手前なのか
は大きな違いがあることも付け加えておきます。

犬のしつけを

「ほめる(嬉しいものを渡す)」や

「叱る(嫌な刺激を提示する)

など「物事を足す」をイメージされる方が多いのですが、本当は「物事を引く」部分こそ大事な場面にも目を向けてみて下さい。

 

犬の「緊張()!!」に目を向けるのは、「嫌で終えない」ための通過点です。