November 2, 2023

トレーニングに柔軟性を持つ飼い主さんが増えたと感じる

 「柔軟性」の言葉のイメージってどんなものですか?

前屈(股関節)
開脚(股関節)
正座(膝関節)

など体の柔軟性がまず浮かびますよね。

柔軟性がなく、腰痛肩こり膝痛にも最近悩んでいるトレーナー馬場としては、緊急に取り組まなければならない課題の1つです。でも、今回の話題は「考え方の柔軟性」についてです。

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「トレーナーの仕事を続けてきてよかった…」とふと口にしていることが増えました。

最近の話を挙げるなら
抱っこが苦手なパピヨンさんの飼い主さんが
「そっか自分から膝に乗る時は、横で寝そべることができるよね」と口にされた時


リードがあると動きがぎこちなかったジャックラッセルテリアのワンコが
翌月の訪問レッスンでは、リードつけたままオモチャを追いかけ、リズミカルにパパの足元に走りこんだ時

どちらも「宿題」として私が提案したものではなく
飼い主さん自身が解決方法を見つけだしたことです。

以前は「犬のしつけはこうあらねばならない」という主流の考え方があったせいか
何か苦手なことに取り組む際に
「犬が楽しい課題」に落とし込むという考え方が一般的ではありませんでした。そのためトレーナーが提案してから、飼い主さんが動くということが多かったように思います。

最近の飼い主さんは、自主的に動かれる方が本当に多い。
自主的に動いて失敗する場があっても、リカバリー(回復)できる柔軟性があるからです。

考え方の柔軟性をつけるには、いろんな方法があるのですが、1つご提案したいことがあります。それは「お家の犬が苦手なことを言葉にしてみる」です。

苦手を口にするのは「めちゃくちゃ難しい行動」です。
苦手なことを口にすると
例えそれがどんなに親しい相手であっても

「えっ?このコはそんなことが苦手なの?」と思われたらどうしよう…
「可哀そう」と思われるのは、嫌だなぁ…

などいろんな不安が湧き出てきます。
私自身、今でもヒトに話すとさらに嫌な気持ちになるから話づらい「苦手」とがあります。

そもそも初対面のヒトと話す時、私は今でもかなり緊張しますし、相棒犬の苦手を説明しても、わかってもらえなくてやきもきすることがあります。でも、何度か会う人は、協力してくれることが多いです。

また、周りの協力が得られる得られないを別にして
苦手なことを口にだすことで
「これは苦手だな。でも、この形ならできるかもしれない」
と発想の転換が図れることもあります。

さて、苦手を口に出した後はどうするか?

私は、最初のレッスン訪問の時には、犬が嫌な刺激(興奮が強い刺激)が起こる状況を、現状取り除けるなら、まず一旦それを取り除いて下さいとお伝えすることが多いです。ただ、それだけじゃ、もちろん問題は解決しない。

次のステップが必要です。それが「犬がわかりやすい行動パターン」を作っていくこと。
マットに乗る。オスワリしてその場で止まるなどはその一例です。

最後のステップが「犬が嫌じゃない行動パターン」を作っていくこと。
この部分が、実は一番難しくて、ご家庭で取り組む時につまずき易いのかもしれません。


昨今「ほめる(楽しい)トレーニング」という言葉が多く見聞きされる中
「犬が嫌じゃない」状況に注目するのは、違和感を感じるかもしれません。ですが、このステップは大切です。

犬が「嬉しい行動を繰り返す」は分かりやすいのですが
犬は「嫌な状況がなくなる行動も繰り返す」ことにも目を向けてほしいんです。

ご家族でも、トレーナーでも、遠慮なく話せる相手を作って、ひとりで抱え込まないこともトレーニングの「こうしなきゃいけない」から抜け出す近道です。ぜひ周りの人を巻き込んだイヌ育てをしていって下さいね。

July 18, 2023

夏のお知らせ

 

「わたくし78月は、おやすみします!」





馬場:「あら?勝手に何やってるの?」

相棒犬:「ねるよってお知らせなの」


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失礼いたしました。相棒犬は、暑い時期は休業中ですが、トレーナー馬場は78月通常通り営業しております。日曜日の枠が限られているので、ご予約の方はお早目にご連絡下さい。

 

さて、今年の夏は去年にも増して暑い日が続いています。

38℃って、お風呂と温度変わらないじゃないか…と思いながら、夜疲れて帰宅すると、ぬるめの湯舟に浸かるとほーっと落ち着きます。

 

暑い時期、みなさんどうやって乗り気っていますか?

 打ち水で涼しくなる?

美味しいかき氷を食べる?

BBQでスタミナ回復?

避暑地へ逃げる?

私は「夏のない国に行きたい…」と日に15回は口にしています。

 

犬にとっても辛い時期。お散歩も短くせざるを得ません。さてそこでご提案です。

この猛暑の機会に、「ノーズワーク」に挑戦してみませんか?

犬が得意な「匂いを嗅ぐ」「物を見つけ出す」行動を存分に生かす活動です。

前期後期と分けて提供しています。

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前期の内容:

ノーズワークの準備と片付けと注意点

ノーズワーク作業の目的の確認

レベルアップの手順①(箱の置き方)

レベルアップの手順②(箱の種類を変える)

ノーズワーク中の犬のボディランゲージ

ノーズワーク作業の開始の合図と、終了の合図

番外編:屋外での作業の準備

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 後期の内容:

食べ物ではない「特定の匂い」への意識づけ

「匂い」の準備と片付けと注意点

レベルアップの手順

「匂い」を見つけた時の犬のボディランゲージ

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興味を持った方、お問合せ下さいね。

June 3, 2023

専門用語に馴れてみよう3(負の強化)

先月、私と相棒犬は久しぶりに山登りに行きました。

切り株の傍で休憩していると、ふたり連れの登山者が相棒犬に気づき、こちらに笑顔を向けました。

 

「わんちゃんに挨拶してもいいですか?」

「うちの犬は怖がりなので、私の横にしゃがんでもらえると助かります!」

 

以前の私は伝えたい言葉がとっさに出てこなくて、手を伸ばす人に相棒犬が後ずさり、それから吠え、私が赤面するという定番サイクルをたどっていました。その時のことを思い出しながら、私は相手の人と目を合わせました。

 

相棒犬は、声をかけてくれた人の手の匂いを嗅ぎ、その手に、ほんの少し肩のあたりから体重を預けました。

 

木のベンチに腰を下ろして、お奨めの山や、テントのことや、調理器具の話をするうちに、相棒犬は私横にいた、もうひとりの登山者の足元で寝転びました。

 

寝転ぶ相棒犬に、なんだか嬉しそうな様子の今日初めて会った人。ほんの短い時間の共有ですが、彼らの八ヶ岳のキャンプ泊の話には、私は自分が身を乗り出して話を聞いているのに気づきました。目を向けると相棒犬は目を細めたままでした。

 

私と相棒犬が去り際に、その登山者のひとりが私に言ったのは、意外な言葉でした。

「実は、私は犬にあまりなつかれることがないんです。このコが横で寝そべってくれてちょっとびっくりしました」と。

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犬は嫌な刺激がある時、その刺激を遠ざけるために「吠える」や「歯を当てる」などの行動を試すことがあります。この行動が「吠える」だった場合、「吠える」ことで嫌な刺激を遠ざけることができたなら、「吠える」行動は強化されるので、同じ行動(吠える・咬む)などの行動を選択します。(負の強化と呼ばれます)

 

今回目を向けたいのは、犬が「嫌だ」と言ったならば

「何が嫌だったんだろう」という部分です。

その「嫌なこと」がない場合、犬はおそらくは別の行動を選択する。

 

同じことは、犬と仲良くなるのが苦手な人にも言えるかもしれません。

「犬の傍に寄ったら吠えられた」などの状況が続いたなら、次に犬に会った時に、どういう接し方が正しいかわからなくて戸惑うでしょう。犬の次の動きが怖くて緊張するなら、無意識に犬を「じっと見る」かもしれません。犬をじっと見たことで「犬がいて緊張した」状況がなくなる経験(犬が吠えて、飼い主が犬を連れて離れていく)が無意識のうちに負の強化(嫌な状況が、犬をみたらなくなった)になっていたのかもしれません。

犬と仲良くなりたいと思っていれば「犬が離れてほっとした」という表現には、首を傾げるかたもいると思います。ただ、犬の次の動きが気になって「目を離せない(じっと見てしまう)」という緊張感はあるのではないでしょうか。

 

負の強化は、無意識の行動にも作用します。

「無自覚の行動(見る)」に対して、「無意識の嫌な気持ち(緊張した)がなくなる」状況が伴う。

 

【負の強化】とは生き物は「嫌な刺激」や「緊張を伴う刺激」を減らすことができた行動は、再度選択するいうこと。

 

犬にとっての【負の強化】を逆手に取りたいのならば
犬が「嫌だー!!大変だー!!」と大騒ぎをしなくても「今そこにある嫌な刺激」がなくなる経験が必要です。

言い換えると「嫌な刺激を取り除こう」ですが
取り除くタイミングが
「嫌だー!」と叫んでからなのか
「嫌だー!」のちょっと手前なのか
は大きな違いがあることも付け加えておきます。

犬のしつけを

「ほめる(嬉しいものを渡す)」や

「叱る(嫌な刺激を提示する)

など「物事を足す」をイメージされる方が多いのですが、本当は「物事を引く」部分こそ大事な場面にも目を向けてみて下さい。

 

犬の「緊張()!!」に目を向けるのは、「嫌で終えない」ための通過点です。

January 3, 2023

まずは、1個だけ

年末にやることがいっぱいある。

12月に毎度頭を抱えるのが「小さな雑用」の山。私は「ゴム手袋を買う」ことができないまま2週間がたった時点で、自分が例年の雑用に埋もれる地獄に突入したことを感じていました。

先週思ったんです。
「ゴム手袋買うなんて、レジが混んでいても5分かからないよね」と。

そう思いながら、やっと取れた1日休みにやりたいことを、順番に紙に書き出していく。
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・ゴム手袋を買う(手荒れをこれ以上ひどくしない)
・お米農家さんに電話(来週末には、お米が切れる)
・愛犬のフードの注文(年末は配達が遅れるかも)
・タイヤを車に積む(11時にタイヤ交換の予約をしてる)
・トレーニング関連の積読本(今度受ける研修のために、疑問点まとめておきたい)
・動画編集(ノーズワークの動画編集、滞ってる。お正月前に終わらせたい)
・姪っ子の誕生日プレゼント(姪っ子の誕生日が近づいてきた)
・リビングの床マットを洗う(本格的な大掃除の前に全部洗って干したい)
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最後の3つはある程度は時間がかかるだろうとは思いつつも、休みが1日あれば、上記のやることリストが全部終わるかなと思っていました。ところが終わらない。このToDoリストを書いたお休みの日には、タイヤ交換以外は何1つとして手付かずのまま1日が終わってしまいました。

5分で終わる作業なのに、ゴム手袋がどうして買えないの…?


雑用は、小さいから簡単に終わるわけではないなぁ。
雑用の怖い部分は、他との「関連付け」が容易で、気が付かないうちに「莫大な作業」になってしまうことだと思いました。そして、作業量(作業時間)だけでなく、作業の範囲の大きさは、一気にヒトのやるきを削いでしまう。

複数まとめてやった方が、効率がいいからと、私は他のことを一緒にやろうと思って結果何も手付かずのままになっていました。

例えばこんな感じ。
年末の買い出しなら、ゴム手袋買うついでに、お餅と、お雑煮の野菜、日用品も買おう!
車屋さんに行くついでに、洗車もしようかな。
ドッグフードの支払いと一緒に、本の注文も一緒にしたら、支払いが一度にできる。
ノーズワーク動画よりも、整理できていない写真のことが気になってきた。

1つ1つのことは、あまり時間のかからないものが多い。
莫大な時間をうっかり投入しがちな写真の整理だって、1件あたりにかかる時間は5分も必要ない。

だけど…上記の4つを上から順に一度読み上げて、再度一番上のリストに目線を向けた時、私はめまいがしました。

「こんなの…絶対終わらない」と。

雑用も、全部合わせたら莫大な時間が必要だ。
ならば1個だけやるのは、決して「間違っていない」のだ。

そういうわけで、2023年のトレーナー馬場の新年の宣言はこれです。

「お休みの日は1つで十分」

ゴム手袋が欲しかったら、ゴム手袋だけを買いにスーパーに行ってくる日があってもいい。

1つだけ片付けると決めると、少し肩の荷が下ります。
ぽかぽか日当たりのよい場所でお昼寝する相棒犬の横で、私は炭火を起こして、焼き鳥を焼き、いいお正月休みを頂きました。

October 31, 2022

一番やらなきゃいけないことと、簡単にできること

「今一番やらなきゃいけないことは何ですか?」

もしそう言われたなら、私にとっても災害対策はやっぱりToDoリストの一番端っこに追いやられそうな気がします。でも、時々思い返して、「今少し時間がある」でできる部分にだけでも、取り組んでおきたい。今日はその思いを書いてみようと思います。

先日、311で被災した地域で勤務する獣医さんの講義を受けました。

震災時のライフラインの復旧は
電気は5日
断水は2週間
ガスは1か月

に及んだそうです。

その獣医さんは「水」と「ペットフード」をまず第一に挙げました。水は、自宅で水を保管することだけでなく、給水所に取りに行くことを踏まえ、「貯水タンク」と「リアカー」も必要な場合がある点をお話されていました。話を聞きながら、私は「車で運ぶ状況ではない…」という点に思い当たっていなかった自分を恥ずかしくなりました。

他にも、水が使えないことによるトイレの問題。ペットの排泄の問題ももちろんですが、ヒトの排泄時もペットシーツの備蓄は役立つそうです。

そして、私自身よく飼い主さんにお伝えしている「犬の身元表示」。首輪と迷子札の着用、マイクロチップ装着など、必ず犬の身元が分かるようにしておくことは、災害時に限らず、大事な家族の身を守るために大切なことです。また、スマホやパソコン内には愛犬の写真はあると思うのですが、それを紙ベースに印刷しておいた方が安心である点もお話されていました。

災害時のための備蓄、どのご家庭でもある程度していると思います。でも、実際に被災された方の話を改めて聞くと、備蓄しているつもりの物や、簡単に用意できるものこそ、用意できていなかった現状に気づきます。

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ドライフードの予備
水のタンク(空)
水のタンクを運ぶリアカー
新聞紙(古新聞、あると思っていたのですが、切らしてました…)
愛犬の写真(以前用意していたものから、印刷しなおそうかなと思っています)
ペットシーツ予備(もう少し買い足してもよいかも…)
迷子札(こちらは、相棒犬が装着済)
クレート
ガムテープ(用意済)
懐中電灯と電池(用意済)
予備のリードと首輪(用意済)
予備の薬(用意済)

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まずは、現状の見直しと、簡単にできることから。
これは、犬の吠えや噛みなどのリハビリ時にも言えることです。難しい課題からより、まず一番簡単にできること。私は、古新聞の調達を今週中にしてきます!


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【参考資料】

災害時におけるペットの救護対策ガイドライン
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/ippan.pdf
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