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2025年4月17日

トレーニングは「失敗を避ける」とは違うということ

いつもトレーナー馬場の失敗談を見ている皆さん。実は、失敗や心配ごとがあることは、決して次に進めなくなるとは限らないということを伝えたいと思います。

 

私は少し前に相棒犬と雪山登山に行ってきました。

 



登山での安全対策は十分か?

雪道の運転はできるのか?

そもそも、寒い山歩きを相棒犬は嫌がらないか?

 

そんな懸念事項を抱えながらも、群馬県まで遠征。相棒犬は、保護した頃は街中歩きが下手で、人や犬がいない場所を選んで歩いていました。今でこそ、近所のワンコさんと一緒に歩いたり、お隣さんのウォーキングにご一緒することがありますが、最初は「行ける場所」を少しでも増やしたいと思いで続けていた山歩き。この活動は、当初思っていた以上に、私たちの行動範囲を広げてくれました。

 

私は早朝の雪道が不安だったので、気温が上がってから目的地に向かいました。山道の中途にある駐車場は運よく1つ空きがありました。早朝から歩いていた登山者さんが、ちょうど下山したところでした。

 

相棒犬は、車から降りてうーんと伸びをすると、車の横でぺたんと座りました。馬場が登山靴に履き替え、荷物を詰めなおす時、以前は車内で待たせていましたが、今は状況を見て車の横で待たせています。

 

山道に入ると、前日に降った柔らかい雪が私たちの足跡を残します。万が一の道迷いの不安を少しでも減らすため、コースは冬前に何度か歩いており、どのぐらいで分岐点に着くかは把握しています。

 

分岐点では、少し迷ってから他の登山者の足跡がない方のコースを選びました。この道なら、もしも雪が深かったとしても、道幅が広く安全に戻って来られる。ずぼっと足が埋まる感触に、飛び跳ねながら歩く相棒犬の足取りは軽やかです。時折、鹿の気配を感じてか鼻をひくひく動かしながら足を止めては、こちらを振り返ります。

 

無事に山頂に続く尾根にたどり着いた時、ふと、足元のアイゼンが忽然と消えていることに気づきました。そういえば、下山中の人とすれ違う時に、私は前のめりに転びました。左足を何かに取られたことを覚えているので、その時の衝撃でアイゼンを落としてしまったのかもしれない。下山にかかる時間は、予定よりも長く見積もる必要がありそうです。

 

不安を減らすには、準備が必要だけど、やってみないとわからないことも、たくさんある。

だからこそ、私はレッスンで会う飼い主さんたちに「まずやってみて下さい」を伝えたい。

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お散歩が下手です。

お手入れが苦手。

車酔いが心配…。

お隣さんに吠えてしまう。

「力づくで何でも解決してしまえ!」と乱暴なトレーニング方法を実施する飼い主さんは、減ってきています。一方で、できないことは「無理させないためにやらない…」と機会自体をなくしてしまうことも、愛犬の行動範囲をぐんと狭めてしまうことを知って下さい。

 

飼い主さんにもワンコにも、新しい「できた!」経験を提供できるトレーナーであるために、私は、毎日「失敗」と「うまくいった!」を交互に重ねながら生活しています。

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山頂では、雪山とは思えない程の暖かい陽気に、相棒犬は足を崩してお昼寝を始めました。私はそこでホットケーキを焼いて食べた後、ゆっくり下山しました。

途中、私が派手に転んだ場所の傍の木に、私が落としたアイゼンがひっかけてありました。