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2016年8月30日

誘導しないで、指示も出さないで、ちょっと待ってみる

のんびり屋か
せっかちか

どちらかと言えば
トレーナーの馬場はせっかちな方です。

今回は、私が見習いのトレーナーだったころの話。

私は聴導犬の訓練のアシスタントをしていた頃があります。
その時の私の役割は
【聴導犬がトレーナーの指示だけでなく他の人の指示も聞ける】練習をすること。

まだ慣れない頃
コマンド練習をすると
ついつい誘導してしまう癖があり

先輩から
誘導するのをちょっと待ってごらん
と指摘を受けていました。

また
指示を出さない方がいい場面もあるから、もう少し全体的なシュミレーションもしてごらん
とも言われました。

私が練習していたのは
基本的なコマンドでした。

オスワリ
フセ
ハウス
マット
これらの基本のコマンドは
ワンコが楽しんでできるように最初誘導で教えます。

おやつの位置はここ
誘導するときの手はこう
こういう風に動かすとこういう姿勢に
そんなコツをちょっとつかむだけで、犬たちの動きが生き生きとしてきます。

誘導の仕方はワンコによって異なることがありますが
ワンコの行動を【引き出す】1つのいい選択肢です。

でもいったんできるようになったら
誘導するのをやめてみます。

そうして「練習」の前の「計画」の部分に立ち返ってみます。

オスワリだったら
こんな詳細な最終目標を決めてみる。
  • どちらを向くか(ママの方を見て?ママにお尻を向けて?)
  • どの位置でなのか(ママの正面?右側?離れた場所でもいいですか?)
  • 何秒ぐらい
  • まわりに誰がいるか
  • まわりでどんな音がしているか
  • ワンコの表情はどんなか(例えば、口を開いているか、口をぎゅっと閉じているか)

私は
本当に教えたいオスワリってどんな形か
具体的に箇条書きにしてみるようにアドバイスされました。

書き出してみると
単にオスワリといっても、いろんなオスワリがあるものです。

例えば
ボールを持ってきてオスワリなら、正面で、なおかつ飼い主さんの側がいい
でも、横断歩道を渡る前なら、正面でオスワリしているより、横でできた方が安全


最終目標は仮決めし
最初のステップを何か決めてみます。

1つの行動は
実はいくつものステップに分けることができます。

誘導しなくても
1つ1つの小さなステップに対していいタイミングでフィードバックが返せれば
最終行動へつなげていくことができます。

このトレーニング手法は【シェーピング法】と呼ばれるものです。

誘導しないと
最初は飼い主が思った通りの行動を「即座」に取ることはしないかもしれません。
そこをぐーっと我慢します。

すると
これはどうかな?
こっちかな?

とワンコ自身で考えて行動を選択してくれます。
特に飼い主さんに褒められて嬉しかった!という経験が多いワンコ程
飼い主さんが指示を出さない時に頭を使って行動を選択します。

つまり
指示を出さないし
誘導もしない代わりに
ワンコがどんな行動をとる自由も奪わない

トレーニングって本来「双方向」のコミュニケーションをよくするためのツールに過ぎません。

常に
【飼い主が指示を出す→ワンコが従う/従わない】
ではなくて

【ワンコが行動を選ぶ→飼い主がフィードバックを返す/返さない】
という場面だって
意識するしないに関わらず
日常生活には必ずあるものです。

ならば、それをちょっと意識的に切り取ってみましょう。


この練習は
無意識にしている行動を「意識してみる」ので
飼い主もちょっと疲れますが
ワンコも頭をいっぱい使うのでかなり健康的に疲れてくれます。

暑い夏には
身体を動かして疲れさせることが毎日できるとは限らない。

そんな時は
おうちの中で「シェーピング」という名の
ワンコとの会話を
楽しんでみませんか?

※ワンコが選択した行動が「飼い主にとってはやめてほしい行動」な場合(例:激しい吠えなど)
単純にシェーピングだけを使うよりももう少し多角的な取り組みが必要になります。