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2017年7月31日

ドッグトレーニング中の「失敗」の対応に関する論文

アメリカのニューヨークにある犬のデイケア施設で
トレーニング方法に関するある調査がなされました。

テーマは、犬のストレスを最小限にするためには
どうするのが効果的かということ。

パピートレーニングにも
怖がりさんのトレーニングに
関係する論文だと思ったので、ブログで紹介したいと思います。

あるトレーナーは
「犬がまったく失敗しないようにトレーニングをすることが重要」
と意見を述べます。

失敗しない、つまり「正しい行動」しかとれないように環境を整えてあげれば
その「正しい行動」を褒めて伸ばすことができるから。
一見正しい意見ですが、「失敗しないようにする」というのは、ある種の緊張感を生むことがあります。1個でも間違いがあれば、失敗。そんなピリピリしたトレーニング現場になってしまえば、ストレス軽減の観点からは逆効果になります。

環境を整えること
できるだけ成功体験を積むこと
は大切ですが、失敗をゼロにという考えは極端すぎるように感じます。

そのデイケアでの調査でも、失敗をすべて避けることはやはり難しいという結論を出しています。
ベテランのトレーナーでも、失敗はある。

身近な例を挙げるなら
・トイレの失敗
・人との挨拶時の飛びつき
などは、どの子犬の飼い主さんも通る道です。
失敗を減らすために改善策は立てますが、最初から失敗ゼロを目指す必要はありませんよね。

さて、では、そうした失敗に関して、犬にどういう対応をかえすべきか。
実は、アメリカのトレーナーの中でもこの対応に関して意見が分かれています。

失敗を無視する(反応を返さない)方法を支持するトレーナー

失敗に対し「今のは正解ではないのでご褒美はなし」という合図(NO Reward Maker)を活用するトレーナー

私自身はこの調査を読んでいて、おもしろいなぁと感じました。
どちらの方法にも、その論拠にも一理あるからです。

「間違いには反応を返さない」というトレーナーはこう言います。
間違った時に反応が返ってこないと、他の行動を試してみようとする犬が多い。「間違いだ」と何度も言われると、他の行動を試す意欲がなくなり、何も試さない犬もいる”

一方で
「間違いは間違いと伝える」というトレーナーは
“間違った反応をただ無視していると、反応が返ってこないことにイライラする犬がいる”と言います。

新しい行動を教えている時点では
私自身は「間違いには反応を返さない」の意見に賛成です。
まずは、失敗してもいいから、犬が自分から動くことを覚えてほしい。
ただし、この時犬に無関心になるわけではありません。

犬が自分から正しいトイレを選べた時
人の足元でくつろいだ時
お散歩中に歩調を合わせて歩いている時
そういった時に返す反応はきっとあるはずです。

一方で、「間違いを知らせる」という考え方も、必要な場面もあると感じます。
たとえば、作業意欲がとても高い犬は、ご褒美がなかなか出てこなくても、1つの行動を継続する率が高いことがあります。

ジャーマンシェパード
レトリーバー
テリア
はその傾向が強い。
作業意欲が犬は、ご褒美がいつかでてくる期待感から行動を続けます。
たとえ「間違い」で反応が返ってこなくても、いつかご褒美が出てくる期待感から行動するので、早めに「違うよ!」と伝えた方がよさそうです。選択肢Aが間違いだとはっきりわかった方が、別の選択肢に進みやすい犬、また状況もあるわけです。

ただし、この「違うよ!」を伝える時に、犬を怖がらせたり怯えさせたりする必要はありません。

ニューヨークのデイケアの調査に話しを戻します。
この調査では「前足をフラフープの中に置く」行動を教える過程で
・失敗を無視する(反応を返さない)方法でトレーニング
失敗に対し「間違い!」と合図(NO Reward Maker)を返すトレーニング

2つのグループに分け、動画で記録しデータを抽出しました。

調査結果には、「間違い」を伝える方法をとったグループの方が、トレーニング結果に個体差が大きく出ました。つまり、作業意欲が高い犬は結果を出せるけれど、そうではない犬は「もういいや~」とあきらめてしまったようです。

また、面白いことに、それぞれのトレーニング時に読み取れるストレスサインに差はなかったけれど、難しいタスクに対する意欲には大きく違いが見られたと記されています。

実は、この論文よりも前の研究で、ストレスがない方が作業意欲が高いとされています。

ということは、人が観察してわかるストレスサインと、わかりづらいストレスサインがある可能性も示唆されます。(調査はまだ研究段階なので、他のデイケアで調査をした場合に、異なる結果が出る可能性もあるのですが。)

学習過程には、トライアル&エラーがつきものです。
「間違い」を伝えることが学習を阻害することもあるという結果は興味深い。
「間違いを伝えてはいけない(叱ってはいけない)」という極論に至ることはしないでほしいのですが、愛犬の学習意欲、ひいては本当の目標到達に向けては「違うよ!」をよく考えて使わなくてはいけないですね。


著者:Naomi Rotenberg
(2015年12月7日)