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2019年4月7日

飼い主がしんどい「トレーニング」は続けられない

私達、ヒトはたくさんのルールに縛られて生きていて
「これはしちゃいけない」
「こんなことをするのは、常識はずれだ」
といったことを、多かれ少なかれ抱えて生きています。

だから今ある生活の中から
さらに「してはいけない」が増えることは、しんどい。

犬のトレーニングで
お家に最初に訪問する時にも、ふとそんなことを感じます。
たとえば
「犬が【こういう状態】の時には、犬を触らない」
という1つの提案

「触らない」とは一見シンプルなようで
とても取り組みづらいアドバイスだと思います。
犬と一緒に生活していて
犬を触りたいきもちと…。
犬の世話をする上で、犬に触れないとお世話できない状況と…。

トレーナーとして「触らないで」というアドバイスが
必要な場面がたくさんあるにも関わらず
大きな葛藤を抱えて向きあわなければならないと…いつも感じます。

「触らない」は1つの例ですが
「してはいけない」だけの取り組みは
すごくしんどい。

犬のトレーニングは、そもそも
犬に「ある行動を教える」はずが
どうして人が「ある行動しない」になってしまうのか!!

またそんな風にいらだちを覚えないにしても
「しないためには、私(ヒト)がこれをできない」
「いつまで私(ヒト)が我慢するんだろう…」
と無気力に感じてしまう状況に向き合うこともあります。

なので犬の問題行動で悩まれている方は
必ず「しないこと」と「これなら楽しくできること」を
セットで取り組んでいってほしいです。

たとえば
犬が【立ち位置を変える】の練習。
これは意外にお役立ちな行動です。
この行動はイヌ自身がその足でその立ち位置を選ぶことが大事です。
言い換えると、リードで引っ張って犬を連れてきても、なかなかその行動を習得することはできません。

【立ち位置】だなんていうと
【脚側(左側にぴったり)を歩く】といったイメージが強いかもしれませんが
もっと身近に「ゆるりと移動」がたくさんあります。
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・駐車場から車に移動
・リビングからお風呂場に移動
・階段の上から階段の下に移動
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さらに「小さな移動」を見てみましょう。
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・ヒトの右側にいる犬が左側に移動
・ヒトの一歩後ろにいる犬が、ヒトを追いかける移動
・お部屋の真ん中で寝ている犬がドッグベッドに移動
・抱っこしにくい位置から、抱っこしやすい位置へ移動
・ソファの上にいる犬がソファの下に移動(移動した後、ソファの下で落ち着く)
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この「小さな移動」ができていないが故に

リードをヒトがうっかり引っ張ってしまったり
犬がなぜか変に興奮してしまったり
と飼い主さんが悩まれる場面につながっていることがあります。

おやつを持っていれば
こんな「小さな移動」簡単では?と疑問に思った方もいると思います。

ですが、小さな移動だからこそ
「おやつで釣って動かす」では習得しにくくなります。
そのため、そのステップを構築するのが、トレーナーの役割、もしくは
トレーナー役を担う飼い主さんの役割なんです。

また飼い主さんに
「犬を触らないで下さい」という状況は
犬が受け入れるのが苦手な部分を
飼い主さんが受け入れなければいけないいう一面もあります。

できない部分に目を向けるのは
私もすごく苦手です。
「この部分できていないよ」だなんて先輩トレーナーに言われた日には
ずーん…とその後2時間落ち込んだりしてました。

ですが
犬がどの部分を受け入れるのが苦手で
このぐらいまでなら大丈夫
の微調整って、この先15年一緒に暮らしていく上で必ず役立ちます。
微調整しだいで、できることが増えるからです。

トレーニングのスタート地点を
「ヒトの負担」や「イヌの負担」で終わらないように。
飼い主さんのお話もしっかりお伺いしながら
私もトレーニングステップを日々調整しています。