今回のコラムは
ちょっと理屈っぽい話から始めます。
行動学という学門の学習理論についてです。
犬はいい結果が伴うから、行動を繰り返すというという理論
犬は何か嬉しいことが伴うとその状況(や周りにいる人)を好きになるという理論
(補足すると、どちらも「嫌なことが伴う時の学習」もあります)
犬の問題行動に対して、きっちりと行動学に実際の状況を当てはめると「なんか変」と感じることがあります。
私は特に
・犬が物や特定の場所を守る行動
・犬がリードを引っ張る行動
の2つは
力任せの手法でも、食べ物で釣る手法でも、問題を解決できないなと思います。
「犬は生き物だから理論(概論)に当てはまらない状況があるのは当たり前!」
そう思う方もいるかもしれません。
その通りです。
そして「理論だけだと解決しない」といいつつも
私は「例外はあるけど理論は使おう!」と思うのです。
私が訪問レッスンでお伺いする時
飼い主さん自身にも理論をお伝えするのは
問題行動に取り組む前に
犬と飼い主の間に、1つの共通語を作るためです。
簡単な例を言えば
「オスワリ」という言葉に対して、犬が座ったり
「ぽち」と名前を呼ばれたときに、こちらを向いたり
ドアが開いても「待って」と声をかけたら、その場で止まることができる
そうした犬とヒトの双方が同じ意味で使うことができる言葉を作るためです。
(「人と犬との共通語づくり」は関西でトレーナー業をしている先輩の言葉で、私も好きな表現の1つです)
吠えた、咬んだ、そうした行動をとった犬に対して
犬に伝わらないままに飼い主さんが怒鳴っても
人の言葉を理解できないまま、犬が吠え続けてしまうことがあります。
中には、飼い主さんのとった行動に余計慌てて、攻撃的に見える行動を選択しているような場面もあるかもしれません。
出血を伴う咬みの問題のような、深刻な問題で頭を悩まされていると
「どうしてオスワリの練習が必要なんだろう…」
「フセなんかできなくても、困らないのに…」
「災害対策のためのクレートと言われても、今はそれどころじゃないのに…」
ふとそんな疑問が浮かんでくると思います。
犬の問題行動に頭を悩ませる時
「まず問題だけをなくしたい」と感じること自体は間違ってはいないのですが
犬とヒトの会話が成り立つ基盤ができていたら
問題解決もずっとスムーズに行くと思うのです。
トレーニング(行動を教える)のが大事なのではなくて
トレーニングを通して作る「共通語の構築」が大事なのだとお伝えしたいです。
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参考までに「オペラント条件付け」について追記します。
これは4つの学習をシンプルにパターン化して表現したものです。
犬のトレーニングにも活用できる場面がいくつもあります。
(特に何もない状態から)
「行動」後に「うれしいこと」がある→その行動の頻度が増える
※例)オスワリしたら、おいしいおやつをもらった!
(うれしいことがある状態から)
「行動」後に「うれしいこと」がなくなる→その行動の頻度が減る
※例)ママの手を咬んだら、ママがオモチャ遊びをやめてしまった…
※例)ママの手を咬んだら、ママがオモチャ遊びをやめてしまった…
(特に何もない状態から)
「行動」の後に「嫌なこと」がある→行動の頻度が減る
※人がしてほしくない行動をしたとき、叱るべきの考えの元になるものですが、大きな問題点があります。犬は嫌なことが起きない状況、例えば飼い主がいない時のみ同じ行動を選択することがあります。トイレの失敗を叱ったが故に隠れてソファの後ろで用を足す状況は、その例かもしれません。
(嫌なことがある状態から)
「行動」の後に「嫌なこと」がなくなる→その行動の頻度が増える
※例)軒先につながれていた犬が、郵便屋さんに吠え続けたら、郵便屋さんが立ち去った。
※例)軒先につながれていた犬が、郵便屋さんに吠え続けたら、郵便屋さんが立ち去った。