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2021年4月15日

「トレーニングはじめるよ!」より「今日はおしまい」の方が大事

3月のぽかぽか陽気のソメイヨシノよりも
4月に入ってからの花冷えの空のしたで咲く八重桜に「あっ…やっと春だ」と一息をつく気がします。風は冷たいけれど、じりじりと日光を背中に感じます。

相棒犬はリビングの日が差す場所を選んで、「どたん」と横向きにねころびます。

「犬というより、こいつはとどだ…」
ぽかぽかに暖まった背中に手を当てると、伸びをする犬。あまりにも動かないその様子を見ていると、西海岸の観光地でひなたぼっこをするアザラシたちを思い出しました。

寝転ぶ犬も、寝転ぶアザラシも「自由だなぁ」と思いつつ今日は「解除(release)」について書きたいと思います。

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犬のトレーニングには、「解除(release)」という概念があります。
「解除」と聞くと
「緊急事態宣言の解除」
「津波警報の解除」
など、ちょっと重々しいイメージをふと浮かべることがありますが、「解除」自体は重々しい意味はありません。単に「それはもうおしまい」と伝えるお知らせです。

お家にきたばかりの犬が
「オスワリ」という言葉の意味を知らないのと同様に
犬は「おしまい」の意味を知りません。そして、トレーニングを始めたばかりの飼い主さんは「トレーニングはもうおしまい」を伝え忘れてしまう時があります。

具体的には、オスワリを練習する時には、オスワリを「おしまいにしていいよ」を伝える、つまり自然な姿勢に戻る選択肢の方も伝えるところまで、がトレーニングになります。

オスワリだと「おしまい」をイメージしにくい方でも

・お留守番の終了
・お手入れの終了
・診察の終了

なら少しイメージしやすいでしょうか?
どれも、どちからと言えば犬が苦手な項目ですが、これらにも「おしまい」があります。苦手なものは「おしまい」があるから、「ちょっとだけがんばる」が可能になっていきます。

1つの事の終わりを伝えることとは
言い換えると「行動の選択肢が犬に戻った」ことを伝えることなります。
「自由にしていい」のなら、特に何かする必要が…?と疑問に思われる方もいるかもしれませんが、家庭犬のトレーニングではトレーニング後の「行動の選択肢」を準備しておくことを念頭におきます。

どうやら「自由にしてね(でもお家のルールに従った上で!)」って意外に難しいので、自信がないパピーさんは飼い主さんを頼ってしまいがち。そして、四六時中飼い主さんの動きや目線を気にしていることは、犬自身も、飼い主さんも疲れてしまいます。

そんな時使える「トレーニングおしまい」の後の行動の選択肢が3つあります。
・齧ること
・寝ること
・匂いを嗅ぐこと

例えばお留守番が苦手な犬は
トレーニングの「おしまい」に関しても、最初は苦手です。オモチャ遊びの「おしまい」もなんだか納得していなくて、代わりに手近なものを齧ってみることもあるかもしれません。

手近なものは、飼い主さんが齧ってほしくない絨毯や、家具や、靴だったりするので、騒々しい「終了」になりがちです。ならば、トレーニング終了時「犬が選んだ犬のオモチャを齧る」ことでも、「おしまい」になるようにしていくのも1つの方法です。

先日お伺いしたお家のパピーさんは、訪問3回目にして初めて、飼い主さんとのおしゃべりの時間に「オモチャを齧る」行動を選択してくれました。飼い主さんの「おおっ!」という顔を見て、私もついにやり。オモチャを齧っているうちにうとうとしてきたワンコは、ドッグベッドの縁に顎を乗せて目をつぶりました。

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私は、相棒犬が「ヒトと一緒にいる時間」から「ひとり時間」への切り替えが下手だった時期のことを時々思い出します。

今では、夜むくっとドッグベッドから起き上がって「今日はもう、おしまい~」とクレートで休む相棒犬を見ていると、事務作業をいつまでも「おしまい」にできない自分にがっかりしてしまいます。私も自分の「おしまい」練習のため今日は早めに寝ようかなと思っています。