レッスンレポートを書きながらふと背後で流れるラジオの声に手を止めました。
"お薦め料理は…ばかスープです。
材料はフランスパン、ニンニク、パプリカと卵だけ。
材料だけ見ると少し不安になるけど、できあがったスープはめちゃくちゃおいしい…"
オリーブオイルで刻んだニンニクをじっくり炒めて、フランスパンを加える。じっくり火を通したパプリカもきっと美味しい。フランスパンが浮かんだスープだから、オニオンスープみたいな感じ?それとも、スペイン料理の「フランスパンのオムレツ」に似てるのかな?
「ばかスープ」かぁ。変な名前だけど。
私は手元にあった手帳に「ぱかスープ」と書き留めました。
数日後、その料理名は「バカスープ」はなく「あほスープ」であることが判明。
もとの名称は「Sopa de ajo(ソパ デ アホ)」。「あほ(Ajo)」とはスペイン語で「ニンニク」を指す言葉でした。
私は「バカ」を「あほ」に脳内で書き換えていました。まったく違和感も持たずに。
「聞き間違え」でなくて「書き換え」が起きたのは、きっと私が「関西弁」と「標準語」が混じった環境で影響してる。私は自分のぼんやり頭のことは棚に置いて、そんなことを考えました。
私は「あほ」という言葉を自分では口にしづらくいのだけど
「あほ」は私の身近にあるなんとなくやさしい言葉。そして面白いことに、先日の「あほ」から「ばか」への書き換えに、上記のような「じっくり考える」行程はもちろん関わっていません。「あほスープ」と聞いた「瞬間に」私は「ばかスープ」と書き換えていたわけです。つまり、経験上(学習した)言葉の入れ替えが、瞬間的に起きていたわけです。
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犬にもきっとあるのではと思いました。
じっくり判断する時と、瞬時に反応する時が。
先日レッスンで、飼い主さんが口にした言葉を思い出します。
「ごほうびのおやつを渡す時、今日は歯があたります…」
いつもは歯が当たることなく、もらったおやつを味わって食べるコ。
飼い主さん自身も、手の位置やおやつの持ち方を気を付けているし。
今日だけ、どうしてか慌ててるのかな?と飼い主さんは首を傾げます。
取り組んでいたトレーニングは、マットに乗る練習。
マット練習は、パピーさんも取り組みやすい練習の1つです。ワンコは、マットに飛び乗って、足を崩すのが上手になってきたので、今回はステップアップで場所を変えて取り組んでいました。マットの位置は、飼い主さんの膝の上でした。
今回の状況では、「歯を当てる」食べ方を「瞬間的な反応」と捉えてみました。
ワンコがその練習を「安全ではない」と感じたサインとして。今までものすごく楽しかった練習だけれど、その状況が変わった時の1つの反応。
ワンコ自身、状況が「安全ではない」と自覚する前状況だったのかなと思います。
もし「ものすごく嫌」なら、その場を離れる(その練習をやめる)選択をするでしょう。
でも
今まで楽しかったし
今までできたし…
おやつはほしいし…。
私はときどき思うのですが、家庭犬は、飼い主さんが一緒にいる時間が増えた分、頑張りすぎていることがあるように感じます。結果飼い主さんも、意図せずに愛犬に無理をさせてしまうのかもしれません。
たった1つの練習時にあった「歯を当てる」行動を
犬のSOSサインと表現するのは大げさと感じますか?
でも、大きな問題が起きる前の兆候は、本当に些細な表現であることが多いです。
私の前述の言葉の書き換えも、もしかすると「寝不足ですよ」の体のサインだったのかもと、先週から少し睡眠サイクルを見直しています。
愛犬の行動を「瞬間的な反応」なのか「選択できた行動」なのか
ご自身の行動も「瞬間的な反応」なのか「あえて選択した行動」なのか
少し見直してみるのも、雨の日にはいいかもしれません。
補足ですが、マット練習中だった、チワワの女の子は
翌週にはお膝の隣でのマットに乗り、ママのお膝にあごを乗せました。今週はまた別のステップに進めそうです。
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【参考資料】
「ファスト&スロー」
ダニエル・カーネマン(著)
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