これまでに「犬の気持ちになって考えてみる」なんて言葉をヒトに言われたり、何か本などで目にしたことがある方はいらっしゃいますか?
「犬が考えていることは何か」
分かったらうれしいけど、私たち人間には犬が考えていることを100%読み解く能力はありません。
手がかりはいろいろあるけれど、「考えていること」はなんとなくしかわからない。一方で「犬が見ているもの」はけっこうわかります。
アサガオに水やりをして、戻ってみても相棒犬は同じ場にいます。いったい何を見ているのかと、私は傍にしゃがんでみました。お隣さんとうちの庭の間にある石壁に、大きなカマキリが釜をもたげてたたずんでいました。相棒犬は、その不思議な生き物をじっと見つめ、カマキリの方は身の危険を感じて動けない状況。カマキリには気の毒ですが、私は思わず「楽しそうね?」と相棒犬に声をかけてしまいました。
カマキリは、私が立っていた時には視界には入りませんでした。多分、壁の色と同化していて見えなかった。私は、しゃがんだことで見えた世界は「相棒犬がいつも見てる世界なんだ」とちょっと楽しくなりました。いつもなら水やりやったら、次は洗濯、そうじき、それから書き終わっていないレッスンレポートに早くとりかからないと!とせかせか動き回る私は、その日は芝生に腰を下ろしました。目線の高さが変わると、思っているよりも「見えているもの」が変わることに気づきます。
「あれっ地面を這っているアサガオまで、蕾をつけてる。明日咲きそう」
「庭の柵、ここ壊れてるや…」
「なんか、この草結び目がある…あれ…虫の巣かも」
見えていない世界というと大げさですが、犬目線の世界って、ヒトが見ている世界といろいろ違うんだろうなぁと感じる。
他のワンコさんの例も挙げてみましょう。
どんな球でもどんとこい!の【ピッチャー精神の高いポメラニアン】さん。
ボールを投げてほしい時は、パパの顔をじっと見ます。誰を見れば、遊んでもらえるのかをきちんと選んでいるのはおそらく間違いありません。ですがパパがボールを持ち上げた時、パパが立っている時とパパがしゃがんでいる時だと、このポメさんの動きが違います。
大柄なパパがボールを拾って動く動作は、しゃんでいる時と、立ち上がっている時とではもしかすると違うのかもしれないし、それとは異なる、何かワンコさん目線での違いがあるのかもしれません。どちらがいい悪いではなく、「異なる図なんだ」という点だけは、パパさんも気づいています。
場面は変わって、【暑がりのシェパードさん】の夕方のお散歩後の図。
気温はもう25度だから…とママさんがクーラーを消すと、ワンコさんはクーラーの下に行きじーっとクーラーを見つめます。クーラーとママを交互に見つめ、ママがリモコンを手にするまで粘るそうです。
「夜になってもクーラー消せなくて困っちゃうのよね」と口にしながらも、愛犬が見ているものに気づいたことが誇らしい様子で話すママさんと会話していると、私はなんだかほっこりします。
私の相棒犬は、カマキリから離れて、私の横に寝そべると、後ろ足を投げだしぐーんと伸びをしました。ヨガの先生もびっくりの柔軟性です。
私たちが離れてほどなく、カマキリはお隣のお庭に避難したようで、ふと目をやると、もうそこには何もいませんでした。