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2024年7月16日

失敗してもいいから…なんてキレイごと?

 「のびのび育てたい」

「このコがやりたいことを、できるだけさせてあげたい」

 

犬育てで一番大事な心構えは、きっとみんな知っています。

それが、なぜかうまくできない。犬自身だけでなく、飼い主さん自身がしんどい思いをしている状況を私は何度となく目にしてきました。

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「こうしなければいけない」

「早く教えなければいけない」

「正しいやり方でやらないと、恥ずかしい」

「周りの人の目が心配でうまくできない」

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私たちが「こうしなければいけない」を学んだのはいつでしょうか?

犬のトレーニングとは、全く関係のない話ですが、私は、大学時代「スピーチ」の授業が何より苦手でした。

「きちんと話さなければいけない」を抱えこんで毎回唸っていました。

 

台本を用意しても、棒読みになってしまう…

発音が悪くて聞きとってもらえない…

焦ると単語の順番までひっくり返る…

そもそも何の話をしようとしていたんだろうと頭がまっしろに…。

 

練習の場が足りないことは自覚していましたが、協力してくれる友人の前でさえ「棒読みの台本」を読むのが恥ずかしい。結果ひとりぶつぶつと、念仏を唱えるような練習だけが繰り返されました。

 

アメリカの短大での授業だったので、私は自分の「英語力(技術)」が周りのクラスメイトに追いついていかないと自分自身を責めていました。でも、私に足りなかったのは英語力よりもむしろ、伝えたいことがあれば伝えるという「意志」でした。

 

当時の私は、クラスメイトの前でしどろもどろのスピーチを披露する「失敗」を繰り返しました。ですが今になって思うのは、あの時の「失敗をする機会」があってよかった、です。

自身の下手なスピーチに赤面しながらも、私は「単位を落とすわけにはいかない」と授業を欠席することはありませんでした。そして、ふと気づいたのは、下手でも続けたことは、今の私の底力になっています。下手なりにクラスメイトと話しかけてみると、特に困ることなく会話することはできたことに驚いたことを今も覚えています。

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子犬を迎えて、飼い主さんが直面するのは

「犬がこんなことをするなんて(想像の上をだった…!)」と

「また失敗してしまった…!」です。          

 

飼い主さん自身、慌てて動くと、子犬も慌てるとわかっていても、失敗がいつまで続くかわからない不安は、飼い主さんを同じ行動に向かわせます。

 

床の匂いがついたら、きっと落ちない…。

同じところで失敗したら、いつまでたっても失敗してしまう…。

 

そんな心配から抜け出すためには、もう一度「トイレ環境」と「寝る環境」を見直すことから始めましょう。

「失敗してもなんとかなる」と実感できるには、甘噛み、吠え、トイレ…どんな子犬も一度は通る成長過程を知識としてもっておくだけでは、きっと不十分なんです。

先日お伺いした6ヶ月のパピヨンさんのママも、同じ不安を抱えていました。お伺いして私が一番驚いたのですが、飼い主さんはトイレ環境はほとんど自力で整えられていました。ですが、「失敗させまい」と柵がたくさんあるが故に、時として犬の動線を遮ってしまう状況が見受けられました。動線を塞がないように環境を再整備した後、しばらく見守ると、パピヨンさんは躊躇なくトイレに行きました。

 

初回のカウンセリングの翌日、ママさんからは「おしっこの失敗がゼロになりました!!」とビックリマークがいっぱいついたメールが届きました。翌週お伺いした時のママさんの笑顔からも、お家の掃除担当を担われるママさんにとって「トイレの失敗」が繰り返されることが、これまでいかにストレスだったかが伺えました。

 

環境整備がトイレにまつわる時もあれば、夜寝る場所、お留守番エリアの場合もあると思います。

ただ、その環境が「犬にとって」だけでなく「飼い主さんにとって」も不安にならない状態を作っていくことが、トレーナーの仕事だと実感したひと時でした。

 

機会を作る。

失敗していい場を作る。

 

失敗をなくすには、矛盾するようですが「失敗してもいい環境(失敗しても飼い主が焦らないでいい時間)」が通過点としてあること、知っておいてくださいね。