October 31, 2022

一番やらなきゃいけないことと、簡単にできること

「今一番やらなきゃいけないことは何ですか?」

もしそう言われたなら、私にとっても災害対策はやっぱりToDoリストの一番端っこに追いやられそうな気がします。でも、時々思い返して、「今少し時間がある」でできる部分にだけでも、取り組んでおきたい。今日はその思いを書いてみようと思います。

先日、311で被災した地域で勤務する獣医さんの講義を受けました。

震災時のライフラインの復旧は
電気は5日
断水は2週間
ガスは1か月

に及んだそうです。

その獣医さんは「水」と「ペットフード」をまず第一に挙げました。水は、自宅で水を保管することだけでなく、給水所に取りに行くことを踏まえ、「貯水タンク」と「リアカー」も必要な場合がある点をお話されていました。話を聞きながら、私は「車で運ぶ状況ではない…」という点に思い当たっていなかった自分を恥ずかしくなりました。

他にも、水が使えないことによるトイレの問題。ペットの排泄の問題ももちろんですが、ヒトの排泄時もペットシーツの備蓄は役立つそうです。

そして、私自身よく飼い主さんにお伝えしている「犬の身元表示」。首輪と迷子札の着用、マイクロチップ装着など、必ず犬の身元が分かるようにしておくことは、災害時に限らず、大事な家族の身を守るために大切なことです。また、スマホやパソコン内には愛犬の写真はあると思うのですが、それを紙ベースに印刷しておいた方が安心である点もお話されていました。

災害時のための備蓄、どのご家庭でもある程度していると思います。でも、実際に被災された方の話を改めて聞くと、備蓄しているつもりの物や、簡単に用意できるものこそ、用意できていなかった現状に気づきます。

---------------------
ドライフードの予備
水のタンク(空)
水のタンクを運ぶリアカー
新聞紙(古新聞、あると思っていたのですが、切らしてました…)
愛犬の写真(以前用意していたものから、印刷しなおそうかなと思っています)
ペットシーツ予備(もう少し買い足してもよいかも…)
迷子札(こちらは、相棒犬が装着済)
クレート
ガムテープ(用意済)
懐中電灯と電池(用意済)
予備のリードと首輪(用意済)
予備の薬(用意済)

---------------------

まずは、現状の見直しと、簡単にできることから。
これは、犬の吠えや噛みなどのリハビリ時にも言えることです。難しい課題からより、まず一番簡単にできること。私は、古新聞の調達を今週中にしてきます!


---------------------

【参考資料】

災害時におけるペットの救護対策ガイドライン
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/ippan.pdf
---------------------

September 8, 2022

あなたの犬が見ているものは?

これまでに「犬の気持ちになって考えてみる」なんて言葉をヒトに言われたり、何か本などで目にしたことがある方はいらっしゃいますか?

 

「犬が考えていることは何か」

分かったらうれしいけど、私たち人間には犬が考えていることを100%読み解く能力はありません。

手がかりはいろいろあるけれど、「考えていること」はなんとなくしかわからない。一方で「犬が見ているもの」はけっこうわかります。

---------------------------------------------------------------

 先日、相棒犬が庭の端っこで寝そべって、一カ所をじーっと見つめていました。

アサガオに水やりをして、戻ってみても相棒犬は同じ場にいます。いったい何を見ているのかと、私は傍にしゃがんでみました。お隣さんとうちの庭の間にある石壁に、大きなカマキリが釜をもたげてたたずんでいました。相棒犬は、その不思議な生き物をじっと見つめ、カマキリの方は身の危険を感じて動けない状況。カマキリには気の毒ですが、私は思わず「楽しそうね?」と相棒犬に声をかけてしまいました。


カマキリは、私が立っていた時には視界には入りませんでした。多分、壁の色と同化していて見えなかった。私は、しゃがんだことで見えた世界は「相棒犬がいつも見てる世界なんだ」とちょっと楽しくなりました。いつもなら水やりやったら、次は洗濯、そうじき、それから書き終わっていないレッスンレポートに早くとりかからないと!とせかせか動き回る私は、その日は芝生に腰を下ろしました。目線の高さが変わると、思っているよりも「見えているもの」が変わることに気づきます。

 

「あれっ地面を這っているアサガオまで、蕾をつけてる。明日咲きそう」

「庭の柵、ここ壊れてるや…」

「なんか、この草結び目がある…あれ…虫の巣かも」

見えていない世界というと大げさですが、犬目線の世界って、ヒトが見ている世界といろいろ違うんだろうなぁと感じる。

 

他のワンコさんの例も挙げてみましょう。

どんな球でもどんとこい!の【ピッチャー精神の高いポメラニアン】さん。

ボールを投げてほしい時は、パパの顔をじっと見ます。誰を見れば、遊んでもらえるのかをきちんと選んでいるのはおそらく間違いありません。ですがパパがボールを持ち上げた時、パパが立っている時とパパがしゃがんでいる時だと、このポメさんの動きが違います。

大柄なパパがボールを拾って動く動作は、しゃんでいる時と、立ち上がっている時とではもしかすると違うのかもしれないし、それとは異なる、何かワンコさん目線での違いがあるのかもしれません。どちらがいい悪いではなく、「異なる図なんだ」という点だけは、パパさんも気づいています。

 

場面は変わって、【暑がりのシェパードさん】の夕方のお散歩後の図。

気温はもう25度だから…とママさんがクーラーを消すと、ワンコさんはクーラーの下に行きじーっとクーラーを見つめます。クーラーとママを交互に見つめ、ママがリモコンを手にするまで粘るそうです。

「夜になってもクーラー消せなくて困っちゃうのよね」と口にしながらも、愛犬が見ているものに気づいたことが誇らしい様子で話すママさんと会話していると、私はなんだかほっこりします。

 -----------------------------------------------------------------------

私の相棒犬は、カマキリから離れて、私の横に寝そべると、後ろ足を投げだしぐーんと伸びをしました。ヨガの先生もびっくりの柔軟性です。

私たちが離れてほどなく、カマキリはお隣のお庭に避難したようで、ふと目をやると、もうそこには何もいませんでした。 

February 13, 2022

聞き間違え?それとも頭の中で書き換えた?

 レッスンレポートを書きながらふと背後で流れるラジオの声に手を止めました。

"お薦め料理は…ばかスープです。
材料はフランスパン、ニンニク、パプリカと卵だけ。
材料だけ見ると少し不安になるけど、できあがったスープはめちゃくちゃおいしい…"

オリーブオイルで刻んだニンニクをじっくり炒めて、フランスパンを加える。じっくり火を通したパプリカもきっと美味しい。フランスパンが浮かんだスープだから、オニオンスープみたいな感じ?それとも、スペイン料理の「フランスパンのオムレツ」に似てるのかな?

「ばかスープ」かぁ。変な名前だけど。
私は手元にあった手帳に「ぱかスープ」と書き留めました。

数日後、その料理名は「バカスープ」はなく「あほスープ」であることが判明。
もとの名称は「Sopa de ajo(ソパ デ アホ)」。「あほ(Ajo)」とはスペイン語で「ニンニク」を指す言葉でした。

私は「バカ」を「あほ」に脳内で書き換えていました。まったく違和感も持たずに。
「聞き間違え」でなくて「書き換え」が起きたのは、きっと私が「関西弁」と「標準語」が混じった環境で影響してる。私は自分のぼんやり頭のことは棚に置いて、そんなことを考えました。

------------------------------------------
例えば、棚に小指をぶつけた時、私はたぶん「焦ってばかなことをした」と口にします。
一方で、大阪人の祖母は「あんたあほやねぇ」と私のドジを笑い飛ばします。

私は「あほ」という言葉を自分では口にしづらくいのだけど
「あほ」は私の身近にあるなんとなくやさしい言葉。そして面白いことに、先日の「あほ」から「ばか」への書き換えに、上記のような「じっくり考える」行程はもちろん関わっていません。「あほスープ」と聞いた「瞬間に」私は「ばかスープ」と書き換えていたわけです。つまり、経験上(学習した)言葉の入れ替えが、瞬間的に起きていたわけです。

------------------------------------------

犬にもきっとあるのではと思いました。
じっくり判断する時と、瞬時に反応する時が。

先日レッスンで、飼い主さんが口にした言葉を思い出します。
「ごほうびのおやつを渡す時、今日は歯があたります…」

いつもは歯が当たることなく、もらったおやつを味わって食べるコ。
飼い主さん自身も、手の位置やおやつの持ち方を気を付けているし。
今日だけ、どうしてか慌ててるのかな?と飼い主さんは首を傾げます。

取り組んでいたトレーニングは、マットに乗る練習。
マット練習は、パピーさんも取り組みやすい練習の1つです。ワンコは、マットに飛び乗って、足を崩すのが上手になってきたので、今回はステップアップで場所を変えて取り組んでいました。マットの位置は、飼い主さんの膝の上でした。

今回の状況では、「歯を当てる」食べ方を「瞬間的な反応」と捉えてみました。
ワンコがその練習を「安全ではない」と感じたサインとして。今までものすごく楽しかった練習だけれど、その状況が変わった時の1つの反応。

ワンコ自身、状況が「安全ではない」と自覚する前状況だったのかなと思います。
もし「ものすごく嫌」なら、その場を離れる(その練習をやめる)選択をするでしょう。
でも
今まで楽しかったし
今までできたし…
おやつはほしいし…。

私はときどき思うのですが、家庭犬は、飼い主さんが一緒にいる時間が増えた分、頑張りすぎていることがあるように感じます。結果飼い主さんも、意図せずに愛犬に無理をさせてしまうのかもしれません。

たった1つの練習時にあった「歯を当てる」行動を
犬のSOSサインと表現するのは大げさと感じますか?

でも、大きな問題が起きる前の兆候は、本当に些細な表現であることが多いです。
私の前述の言葉の書き換えも、もしかすると「寝不足ですよ」の体のサインだったのかもと、先週から少し睡眠サイクルを見直しています。

愛犬の行動を「瞬間的な反応」なのか「選択できた行動」なのか
ご自身の行動も「瞬間的な反応」なのか「あえて選択した行動」なのか
少し見直してみるのも、雨の日にはいいかもしれません。

補足ですが、マット練習中だった、チワワの女の子は
翌週にはお膝の隣でのマットに乗り、ママのお膝にあごを乗せました。今週はまた別のステップに進めそうです。

---------------------

【参考資料】

「ファスト&スロー」
ダニエル・カーネマン(著)

---------------------


November 15, 2021

活動のランキング

 みなさんがふっと頭に浮かべる「ごほうび」って何ですか?

疲れた時に食べるチョコレート(犬は食べれません。飼い主さんのごほうびの話です)
いいお肉のすき焼き鍋
温泉宿で食べる極上のお刺身定食
たっぷり卵のオムライス
焼きたてのクロワッサン(近くのパン屋さんに今から行こうかなぁ)
もやしが山盛りの横に大きなチャーシューが乗ったラーメン
挽き立ての豆でいれた珈琲

お休みの日にはたまの贅沢にこんなものを食べたい。
でも、先日の私のお休みで「休みいいなぁ」と感じたのはまったく別の場面。

---------------------
ここ数ヶ月私はお休みがちゃんと取れないままに、動き続けてました。

だんだん疲れがたまってきたのか
いつもは15分もあれば、書き上げているレッスンレポートを書く手が遅くなり…
仕事が終わらないので夜遅くまで起きている…
眠いので、ますます仕事効率は落ちて…

誰もが一度は経験したことがある(多分?)悪循環の状態です。

ようやく1日休みが取れた昨日
いつもより2時間ゆっくり寝てから相棒犬の散歩に行き、掃除機をかけ、いつもと同じトーストを朝ごはんに用意して。


その後に庭で日向ぼっこする相棒犬の横に腰を下ろすと、ふと頭に浮かんだのが靴洗い。
「そうだ!ずっと靴を洗おうと思ってたんだ!」

秋めいた涼しい風と、じりじりと背中に当たる日光。(今年は11月なのに、陽射しが暑い!)
横向きにごろんと寝転んで、日光浴を楽しむ相棒犬を見ながら、黒いスニーカーをブラシでごしごし。あっ、少し傷んでる。そろそろ買い替え時?なんてことをぼんやり思いながらようやく「今日は休みなんだ…」と実感がわいてきました。

靴を洗い終わって、水を切って日当たりのいい場所に置く。
それから相棒犬のぽっかぽかに暖まった背中に手を乗せてみる。
それだけのことがやたら嬉しい。

今日は、刺身定食のごちそうよりも、靴洗いをしながらの日向ぼっこの方が断然上。

---------------------

食べ物は、犬にとってもヒトにとっても行動の原動力になるものの1つです。
ただ、私たちが「食べ物のためだけに働いているわけではない」のと同じように
犬たちの行動の原動力も、食べ物だけではありません。

特に狩猟本能に基づく「狩り行動」は、犬が選ぶ行動として「優先順位」が強い。
狩猟意欲が高い犬もいれば、低い犬もいるかもしれない。
だが、まったくない犬はいない。


「狩り行動」は1つの行動ではなく、狩りに関わる一連の動作を指します。

①対象に気づき(Scan)
②対象の匂いを嗅ぎ(Scent)
③対象を目で追い(Stalk)
④対象を足で追いかけて(Chase)
⑤対象に飛びついて(Grab-bite)
⑥対象を持って運び(Possess)
⑦対象をばらばらにして(Kill-bite)
⑧対象を食べる(Consume)

気になる匂いがあれば、匂いを追う動きを引き出し
素早い動きがあれば、その対象を追いかける動きを引き出す

どちらも犬として自然な行動で、追いかけたり、匂いを嗅いだりする行動を「すべて禁止」することは、不可能です。ただ、お散歩中やお留守番中の「追いかけられない」状況では「(追いかけずに)止まる」、例えば「周りの匂いを嗅いだり」、「一旦止まって座る」などへの行動の切り替えが必要になります。

ただ、その前に強調したいことがあります。
お留守番課題であれ、お散歩課題であれ
「止まる練習(例えばオスワリ)」だけ頑張ってみると、うまくいきません。それはたとえおやつがあっても、活動のランキングを無視しているから。

必要な活動が充足されていなければ
大好きな食べ物も、うれしくない。

そして、必要な活動は、犬と人とでは異なることも、再確認してみて下さい。
犬にとって必要な狩り活動は、お散歩時にぐいぐい引っ張らなくても、お留守番時に家具をバラバラにしなくても、満たす方法はあります。

まずは、愛犬と1対1で過ごす時間を1日に確保してみて下さい。
苦手なものがあるコも、必ず「落ち着ける場」と「楽しく取り組める狩り行動」は見つけられるはずです。
------------------

参考資料
「Hunting Togather」
Simone Mueller (著)

---------------------

August 21, 2021

暑い日のできごと。

わたくしいぬです。

今、外がとてもあついので
お家の中でかいぬしのしごとを手伝っています。



「ねてるだけ?」っていいましたね。
そんなことはありません!

レッスンの時に、かいぬしがオモチャを持っていくでしょう?
わたくしが、どのオモチャが要改善か指摘してます。

「うむ!合格!」


かいぬしは、わたくしに夕方になったら常夜灯をつけてほしいらしい。
まだ日がながいうちに練習中です。


かいぬしよりも先にねるのが、規則正しいわたくしの生活リズム。

まだまだ暑いひがつづくのでしっかり寝てしっかり食べてのりきりましょう。