February 13, 2022

聞き間違え?それとも頭の中で書き換えた?

 レッスンレポートを書きながらふと背後で流れるラジオの声に手を止めました。

"お薦め料理は…ばかスープです。
材料はフランスパン、ニンニク、パプリカと卵だけ。
材料だけ見ると少し不安になるけど、できあがったスープはめちゃくちゃおいしい…"

オリーブオイルで刻んだニンニクをじっくり炒めて、フランスパンを加える。じっくり火を通したパプリカもきっと美味しい。フランスパンが浮かんだスープだから、オニオンスープみたいな感じ?それとも、スペイン料理の「フランスパンのオムレツ」に似てるのかな?

「ばかスープ」かぁ。変な名前だけど。
私は手元にあった手帳に「ぱかスープ」と書き留めました。

数日後、その料理名は「バカスープ」はなく「あほスープ」であることが判明。
もとの名称は「Sopa de ajo(ソパ デ アホ)」。「あほ(Ajo)」とはスペイン語で「ニンニク」を指す言葉でした。

私は「バカ」を「あほ」に脳内で書き換えていました。まったく違和感も持たずに。
「聞き間違え」でなくて「書き換え」が起きたのは、きっと私が「関西弁」と「標準語」が混じった環境で影響してる。私は自分のぼんやり頭のことは棚に置いて、そんなことを考えました。

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例えば、棚に小指をぶつけた時、私はたぶん「焦ってばかなことをした」と口にします。
一方で、大阪人の祖母は「あんたあほやねぇ」と私のドジを笑い飛ばします。

私は「あほ」という言葉を自分では口にしづらくいのだけど
「あほ」は私の身近にあるなんとなくやさしい言葉。そして面白いことに、先日の「あほ」から「ばか」への書き換えに、上記のような「じっくり考える」行程はもちろん関わっていません。「あほスープ」と聞いた「瞬間に」私は「ばかスープ」と書き換えていたわけです。つまり、経験上(学習した)言葉の入れ替えが、瞬間的に起きていたわけです。

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犬にもきっとあるのではと思いました。
じっくり判断する時と、瞬時に反応する時が。

先日レッスンで、飼い主さんが口にした言葉を思い出します。
「ごほうびのおやつを渡す時、今日は歯があたります…」

いつもは歯が当たることなく、もらったおやつを味わって食べるコ。
飼い主さん自身も、手の位置やおやつの持ち方を気を付けているし。
今日だけ、どうしてか慌ててるのかな?と飼い主さんは首を傾げます。

取り組んでいたトレーニングは、マットに乗る練習。
マット練習は、パピーさんも取り組みやすい練習の1つです。ワンコは、マットに飛び乗って、足を崩すのが上手になってきたので、今回はステップアップで場所を変えて取り組んでいました。マットの位置は、飼い主さんの膝の上でした。

今回の状況では、「歯を当てる」食べ方を「瞬間的な反応」と捉えてみました。
ワンコがその練習を「安全ではない」と感じたサインとして。今までものすごく楽しかった練習だけれど、その状況が変わった時の1つの反応。

ワンコ自身、状況が「安全ではない」と自覚する前状況だったのかなと思います。
もし「ものすごく嫌」なら、その場を離れる(その練習をやめる)選択をするでしょう。
でも
今まで楽しかったし
今までできたし…
おやつはほしいし…。

私はときどき思うのですが、家庭犬は、飼い主さんが一緒にいる時間が増えた分、頑張りすぎていることがあるように感じます。結果飼い主さんも、意図せずに愛犬に無理をさせてしまうのかもしれません。

たった1つの練習時にあった「歯を当てる」行動を
犬のSOSサインと表現するのは大げさと感じますか?

でも、大きな問題が起きる前の兆候は、本当に些細な表現であることが多いです。
私の前述の言葉の書き換えも、もしかすると「寝不足ですよ」の体のサインだったのかもと、先週から少し睡眠サイクルを見直しています。

愛犬の行動を「瞬間的な反応」なのか「選択できた行動」なのか
ご自身の行動も「瞬間的な反応」なのか「あえて選択した行動」なのか
少し見直してみるのも、雨の日にはいいかもしれません。

補足ですが、マット練習中だった、チワワの女の子は
翌週にはお膝の隣でのマットに乗り、ママのお膝にあごを乗せました。今週はまた別のステップに進めそうです。

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【参考資料】

「ファスト&スロー」
ダニエル・カーネマン(著)

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November 15, 2021

活動のランキング

 みなさんがふっと頭に浮かべる「ごほうび」って何ですか?

疲れた時に食べるチョコレート(犬は食べれません。飼い主さんのごほうびの話です)
いいお肉のすき焼き鍋
温泉宿で食べる極上のお刺身定食
たっぷり卵のオムライス
焼きたてのクロワッサン(近くのパン屋さんに今から行こうかなぁ)
もやしが山盛りの横に大きなチャーシューが乗ったラーメン
挽き立ての豆でいれた珈琲

お休みの日にはたまの贅沢にこんなものを食べたい。
でも、先日の私のお休みで「休みいいなぁ」と感じたのはまったく別の場面。

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ここ数ヶ月私はお休みがちゃんと取れないままに、動き続けてました。

だんだん疲れがたまってきたのか
いつもは15分もあれば、書き上げているレッスンレポートを書く手が遅くなり…
仕事が終わらないので夜遅くまで起きている…
眠いので、ますます仕事効率は落ちて…

誰もが一度は経験したことがある(多分?)悪循環の状態です。

ようやく1日休みが取れた昨日
いつもより2時間ゆっくり寝てから相棒犬の散歩に行き、掃除機をかけ、いつもと同じトーストを朝ごはんに用意して。


その後に庭で日向ぼっこする相棒犬の横に腰を下ろすと、ふと頭に浮かんだのが靴洗い。
「そうだ!ずっと靴を洗おうと思ってたんだ!」

秋めいた涼しい風と、じりじりと背中に当たる日光。(今年は11月なのに、陽射しが暑い!)
横向きにごろんと寝転んで、日光浴を楽しむ相棒犬を見ながら、黒いスニーカーをブラシでごしごし。あっ、少し傷んでる。そろそろ買い替え時?なんてことをぼんやり思いながらようやく「今日は休みなんだ…」と実感がわいてきました。

靴を洗い終わって、水を切って日当たりのいい場所に置く。
それから相棒犬のぽっかぽかに暖まった背中に手を乗せてみる。
それだけのことがやたら嬉しい。

今日は、刺身定食のごちそうよりも、靴洗いをしながらの日向ぼっこの方が断然上。

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食べ物は、犬にとってもヒトにとっても行動の原動力になるものの1つです。
ただ、私たちが「食べ物のためだけに働いているわけではない」のと同じように
犬たちの行動の原動力も、食べ物だけではありません。

特に狩猟本能に基づく「狩り行動」は、犬が選ぶ行動として「優先順位」が強い。
狩猟意欲が高い犬もいれば、低い犬もいるかもしれない。
だが、まったくない犬はいない。


「狩り行動」は1つの行動ではなく、狩りに関わる一連の動作を指します。

①対象に気づき(Scan)
②対象の匂いを嗅ぎ(Scent)
③対象を目で追い(Stalk)
④対象を足で追いかけて(Chase)
⑤対象に飛びついて(Grab-bite)
⑥対象を持って運び(Possess)
⑦対象をばらばらにして(Kill-bite)
⑧対象を食べる(Consume)

気になる匂いがあれば、匂いを追う動きを引き出し
素早い動きがあれば、その対象を追いかける動きを引き出す

どちらも犬として自然な行動で、追いかけたり、匂いを嗅いだりする行動を「すべて禁止」することは、不可能です。ただ、お散歩中やお留守番中の「追いかけられない」状況では「(追いかけずに)止まる」、例えば「周りの匂いを嗅いだり」、「一旦止まって座る」などへの行動の切り替えが必要になります。

ただ、その前に強調したいことがあります。
お留守番課題であれ、お散歩課題であれ
「止まる練習(例えばオスワリ)」だけ頑張ってみると、うまくいきません。それはたとえおやつがあっても、活動のランキングを無視しているから。

必要な活動が充足されていなければ
大好きな食べ物も、うれしくない。

そして、必要な活動は、犬と人とでは異なることも、再確認してみて下さい。
犬にとって必要な狩り活動は、お散歩時にぐいぐい引っ張らなくても、お留守番時に家具をバラバラにしなくても、満たす方法はあります。

まずは、愛犬と1対1で過ごす時間を1日に確保してみて下さい。
苦手なものがあるコも、必ず「落ち着ける場」と「楽しく取り組める狩り行動」は見つけられるはずです。
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参考資料
「Hunting Togather」
Simone Mueller (著)

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August 21, 2021

暑い日のできごと。

わたくしいぬです。

今、外がとてもあついので
お家の中でかいぬしのしごとを手伝っています。



「ねてるだけ?」っていいましたね。
そんなことはありません!

レッスンの時に、かいぬしがオモチャを持っていくでしょう?
わたくしが、どのオモチャが要改善か指摘してます。

「うむ!合格!」


かいぬしは、わたくしに夕方になったら常夜灯をつけてほしいらしい。
まだ日がながいうちに練習中です。


かいぬしよりも先にねるのが、規則正しいわたくしの生活リズム。

まだまだ暑いひがつづくのでしっかり寝てしっかり食べてのりきりましょう。

July 19, 2021

行動の選択肢って、何だろうか?

仕事が休みの日
大量の野菜と格闘するのが、日課になってきたトレーナーの馬場です。

今日は、いただき物の
ゴーヤ
オクラ
ピーマン
キュウリ
を準備中。

ここ数日、夕食はカレーが続いており
「カレーはすごく好きだけど、緑の野菜が食べたい…」
偏った食事に、少し嫌気がさしていた矢先
畑をしている友人から、野菜をお裾分けしていただきました。

ゴーヤは薄切りにして、蒸して、ゴマドレッシングと和えて「ゴーヤサラダ」に。
キュウリ2本はショウガと合わせて「たたきキュウリ」に、2本はオイスターソースで味付けした「キンピラ」にし、どちらも冷蔵庫で冷やします。
ピーマンは乱切りにして「ジャコピーマン」に。
オクラは、茹でてそのままつまみます。
採れたてのオクラは、マヨネーズをつけなくても美味しい。

普段は移動中の車でも食べやすいように、コメ、パン!と
炭水化物メインのお昼ごはんが
今日のお昼ごはんには、豚肉と水菜がたっぷりの、はりはり鍋を頂きます。

野菜を食べるのも
料理をするのも楽しい

でも、1日の仕事が終わって、事務所に戻り
レッスンのレポートに頭を悩ませながら相棒犬の散歩に出かけ
洗濯機回して、お風呂を洗って、あ…掃除機もかけて…
それから料理する?と聞かれれば

おそらく、私は料理する以外のことの方を自然に選びそうです。

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さて、今日は犬にとっての行動の選択肢のお話。
室内で過ごす子犬にとって、行動の選択肢は、実は無限にあります。
どれかは「正解(一緒に暮らす人にとって)」でどれかは「問題行動」と分類される。

ある子犬は
オモチャも齧るけど、家具も齧る。
オモチャを持って走るけど、家事で慌ただしく動き回るママの足も追いかけて咬む。

ちゃんと「オモチャ遊び」できるのに
どうして「いい子(正しい行動を選べない)にできないの」
なんてことは、どんな熟練した飼い主さんも一度は思ったことがあるはず。

この時一呼吸おいて、考えてみてほしいことは
子犬が「その特定の瞬間」に正しい行動を選べることを知っているかです。

例えばこんな場面を思い浮かべて下さい。
テーブルの上に、飼い主さんがメガネを置きます。
普段は、テーブルに物は置いていません。
ただ、その日は仕事ですごく疲れていたので、うっかりメガネを置いてしまった。

飼い主さんは、パピークラスに通っていてマット練習に取り組んでいます。
飼い主さんが少しの事務作業をする間
子犬はマットの上で座ったり寝そべったりして待っていられます。

さて、その飼い主さんが慌ただしく明日の仕事の書類を整理している脇で
「いつ遊んでくれる?」と期待してオスワリしていた5か月の子犬がとる行動はどちらでしょうか?

1)飼い主さんの傍でオスワリしたまま待ってみる
2)テーブルのメガネをもって齧って、追いかけてくる飼い主さんを見て走る

この問題の答えは…実はありません。

ただ、子犬を迎え入れる時は、いろんな想像をしてみることは大切です。
メガネをかけた人の傍で「オスワリ」できる犬が
メガネが机の上に置いてあるときには「メガネに飛びつく」可能性に気づいた人は
元気な子犬を迎えた時に慌てにくいはずです。

また
パパが「オモチャ遊び用のオモチャ」を持った時にオスワリする子犬と
パパが「オモチャ遊び用のオモチャ」を持った時に飛びつく子犬とでは
メガネに対しても、異なる行動を選択するかもしれません。

猛暑と闘いながらのこの時期
私は時々、料理をさぼって、
お惣菜を買ったり、いただきもののキュウリを丸かじりしてみたりします。

私たちはいつも
好きなことをするのではなく「できること」をしている。

子犬たちが選ぶ行動も、きっと「現時点」の「できること」を選択しているのかもしれません。

June 17, 2021

口輪している犬は「悪い犬」ではありません。

口輪という言葉を聞いて
あなたが浮かべるのはどんなイメージですか?

「口輪」という言葉を聞いて
もしかして一部の人が思い浮かべるイメージはこんなことってないでしょうか。
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【う~っ】と歯をむき出して唸る犬を羽交い絞めにし
口輪を素早く装着する
犬は口輪をしたまま、歯をカチカチ言わせており
口輪を外したら、すぐにでも傍にいる人を咬みそう…
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そんなイメージがあるならば
それと違う図も思い浮かべてほしいのが、今回のブログのテーマです。

どんな犬も、犬は「自分の身を守る」ためには歯を使う動物です。
そして、痛みがある時には、普段平気なことにも過敏になる傾向があります。

私が会ってきた犬の中で
「私の方が地位が上だから咬んでやろう」と咬んだ犬はいません。

咬む行動のきっかけ(実際には怖くて咬んでいても、「攻撃を好んで」咬んでいる)
を読み違える飼い主さんは
おそらく、咬む行動自体が不安で「上位に立とうとしている」考えについ傾きますが
「うちの犬は…が苦手」ということもきちんと把握されていると感じます。

さて文章で読むと、どこで区切るのがわかりづらいのですが
①【咬む行動のきっかけ(怖い!、自分の身を守りたい)不安な気持ち】と
②【咬む行動(咬んだら、怖いと思っていたものがなくなった)実体験】
は、トレーニングにおいて分けることが大切です。

不安を100%は取り除けない時に、実体験を防ぐ1つの道具が口輪になります。

トリミングサロンでも
動物病院でも
口輪は用意されていて
診察などでも必要に応じて使用します。

でも、動物病院は病気やケガを治療する場所で
トリミングサロンはカットやシャンプーをする場所で
口輪の練習をする場ではありません。

言い換えると
犬が口輪に馴れる練習は、飼い主さんの役割になります。

口輪のトレーニングが楽しくて
口輪を持っている飼い主さんを、オモチャを持っている飼い主さんと同じ目で見る犬
本来の口輪トレーニングは、そんな犬の気持ちづくりから始まります。

「口輪=悪い」のイメージは、残念ながら一般的に多いように感じます。
飼い主さん自身も、「うちの犬は口輪が必要と言いたくない」とはっきりおっしゃる方もいます。

「素早くつけてしまえば、犬も抵抗がないはず」と感じている方もいますが、その方も「口輪が楽しい」とは決して思っていません。

だからこそ、トレーナーの馬場は、再度宣言します!
「口輪楽しい」を少しでも広めていくぞ!と
「口輪は、犬の楽しいを増やすための道具でもある」と!

口輪を持った時と
オモチャを持った時
愛犬が同じ反応を引き出せるのにかける時間は、1日30秒ぐらいで十分です。
どんな風に?と少し興味ありませんか?

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参考文書
Muzzle Up Project
https://muzzleupproject.com/for-vets/
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