July 19, 2018

新しい「ことば」や「情報」がストンと理解できるとき

犬のトレーナーの馬場です。

犬のトレーニングに関して「学習理論」は
頭の片隅には置いておいた方が役立ちます。

私は、レッスンなどで飼い主さんにお渡ししている
ハンドアウトがいくつかあって
その1つは「学習理論」についてです。

例えば
「オペラント条件付け」
「関連付けの学習」
ということば。
雑誌やネットで見たから聞いたことはあるけど
あまりよくわからないと感じる飼い主さんはいませんか?

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「オペラント条件付け」は
犬が「ある行動」の直後に「物・こと」を得たり無くすることによる
「行動」に対しての「学習」

「関連付けの学習」は
犬が「ある状況」を直後の「物・こと」に結びつける
「周りにいる人やもの、状況」に対しての「学習」
※代わりに「古典的条件付け」ということばで表現されることもあります。
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もうこの数行を読んだだけで
「なんだかわからないことば…!嫌だなぁ」という
イメージが、絶対にある!と思います。

私は、お散歩トレや、個別レッスンで
できるだけ簡単な練習と組み合わせて説明していくようにしているですが、
どんなにシンプルにしてもややこしい部分であることには変わりなく。

1つ「ややこしい」があると
トレーニング自体がちとめんどくさいもの…
と感じさせていないか、レッスン後は
いつもちょっぴり不安です。

実のところ、私自身、
理論はあまり好きではありませんでした。

ある時
「関連付けの学習」と
「オペラント条件付け」
の違いにを説明しなければいけない場面があり
自分の理解不足を呪ってみたり
動物行動学に関する本を読もうとすると頭痛がしたりしていました。

私が犬のトレーニングや学習理論をきちんと学んだのはアメリカだったのですが
理論もわからなければ
英語もちんぷんかんぷんな状況。
(日本でも学べる場は現在いっぱいあります)

そんな中でも私が、学習理論を「わかる」ようになったのは
誰かから「教えてもらった」からではなく
私自身が動いたからではないかと思っています。

私は渡米直後から
しつけ方教室のアシスタントをしていました。

しつけ方教室のアシスタントとはいっても
最初の頃はできることは掃除ぐらい。
毎週水曜日は、無口に掃除ばかりしていました。

それでも、しつけ方教室の中で聞こえてくる英単語を書き留めては
「あのことばの意味は何だろう?」
「あの練習は、なんていう言葉で表現するんだろう」
と調べたい気持ちがいっぱいでした。

また、当時の私はしつけ方教室を教えているトレーナーさんと
どうしても話がしたかったのです。

飼い主さんに教えている時に何に重点を置くか興味があったし
怖がりのワンコさんの行動に対する疑問点もたくさんありました。
そして、トレーナーさんの「ことば」を知らない限りは質問することもできません。

そうして、自分で動くうちに知らない「ことば」に対する興味が出てきた。
それが私が学習理論を理解するようになった
足がかりになったのでは、と思います。

現在私は「ノーズワーク」という
犬の嗅覚を使う活動を勉強中です。
そして実際に犬が鼻を使って物を探す様子を見ているうちに
気づいたことがいくつか出てきました。

例えば、屋外で「ある物品(私は遊びの延長で、オモチャを使用)」を探す時
相棒犬は、直線で動くというより、どちらかというと、円を描くようにして捜索します。円を描きながら、時としてその物品の真横を通り過ぎて、スタート地点まで戻っています。

そのまま見守っていると、ちょっと違った円を描きながら再度物品の方向へ進みます。最終的に見つけると、タタタッと、足早になる模様です。

最初にこの様子を見た時
もしかして相棒犬は
鼻を使わずにやみくもに捜索している
つまり目を使って探しているのではないかと疑ったほどです。

そんな折、ふと手にした本に
その匂いや犬の嗅覚についての記述がを見つけました。

この本を、ノーズワークを学ぶ前に手にしていたら、
私は「嗅覚」についての章は
流し読みしていたかもしれません。

でも、今はじっくり読んじゃいます!
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においを追う時は、ジグザグに行ったり来たりしながら進んでいく。残された跡が発しているにおいの帯の、両端を見つけていくためだ。わからなくなると後ろを向き、目に見えない跡を逆戻りする。犬はこうして手掛かりをたどりながら、どの方向に進んで行くかも決めなければならない。その時、できる限り目で見えるヒントを利用するらしい。

屋外ではふつう、なんらかの風が吹いていて、犬のところまで匂いを運んでくれる。ところが、そよ風の運び方は予測が難しい。においは風上から風下に向かってまっすぐ進むように思えるかもしれないが、実際には、風下に進みながら横にも拡散し、発生源を頂点とする円錐形にひろがっていく。しかも、ある瞬間のにおいの広がり方を上から見ると、円錐というよりむしろ蛇行に近く、強くしっかりにおう場所と、弱くかすかな場所ができている。その原因は、風が吹く時に地面との摩擦によって生まれる渦だ。渦の直系は数メートルにもなることがあり、においを蛇行させる。もっと小さい渦は、蛇行の幅を広げるか、においを一か所に集中させる。(ジョン・ブラッドショー p289-291)
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どうやら
相棒犬は、きちんと鼻を使って捜索できているようです。

犬はどうやって嗅覚を使うのだろう?
そもそも、匂いはどのように広がるのだろう?

そんな「興味」がある時は
新しい情報も、ストンと理解できたりします。

本来なら「学習理論」についても
飼い主さんが「本当に知りたい」タイミングで
情報をお渡しできるのが一番。

だから、レッスンでお渡した
ハンドアウトはパーっと目を通した後は、一旦忘れても大丈夫。

ただ興味を持った時に、「もう一度見てみたい」と感じてもらえる
そんな資料を作れるよう私も日々精進したいと思います。

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【参考資料】
「犬はあなたをこう見ている
― 最新の動物行動学でわかる犬の心理」
ジョン・ブラッドショー 著
西田美緒子 訳
2012年出版
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